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草の上の昼食

草の上の昼食

LE DEJEUNER SUR L'HERBE

93

一人旅

5.0

ルノワールの幸福論

ジャン・ルノワール監督作。 フランスの巨匠:ジャン・ルノワールがキャリアの晩年に撮った恋愛喜劇で、著名な生物学者と田舎娘の惹かれ合いを通じて人間性の素晴らしさを謳い上げています。 人工授精推進派の生物学者(ポール・ムーリス)が、伯爵令嬢との政略結婚を祝う昼食会の場で農家の純朴な娘(カトリーヌ・ルヴェル)と出逢い惹かれ合ってゆく様子を描いた恋愛喜劇で、男女の自然な恋愛感情&性交渉の必要性を真っ向から否定する科学派&合理主義な生物学者が図らずも一人の田舎娘に夢中になる様を、南仏プロヴァンスの風光明媚な自然風景に乗せて綴っています。 ヤギ飼いのみすぼらしい男が笛を吹くと何処からともなく突風が吹き荒れ、それをきっかけに人間本来の自然な感情&欲望が人々の間で一気に溢れ出ていくという半ばファンタジックな映像演出が大変素晴らしい一篇で、突風を受けた生物学者もまた豊満&純情な田舎娘に対する恋心&欲望に心と体を突き動かされていきます。 人間が抱く本来の感情を科学的見地から否定するのではなく、自然のままにそれを享受することが幸福への最良の方法であることを気取らずユーモラスに教えてくれる“人間賛歌”で、科学を信奉していた生物学者が言い放つ「科学は粉砕」というそれまでの主張を転回させた発言や取巻きを困惑させる突飛な行動の数々が愉しいですし、初期作『ピクニック』(36)を彷彿させる川沿いの煌びやかな自然美やルノワール監督とは縁の深い名作曲家:ジョゼフ・コズマによる陽気&開放的な音楽も適所で輝きを放っています。

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