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草の上の昼食

草の上の昼食

LE DEJEUNER SUR L'HERBE

93

UBUROI

5.0

ルノワール的でたらめの極地

幸福な映画とはこのような作品のことをいう。映画の幸福をここまで感じさせる作品はまれだ。笛をふくと大嵐だ。人工授精の先生方はじめ紳士淑女たちのピクニックがすっかり吹き飛ばされて、てんやわんや椅子やテーブルははじけ飛び、スカートはめくられ、人たちは立っていられず、ようようクルマに乗り込もうとする。人工授精の権威なんとか教授は、学生の集まりに招かれて一夜のキャンプに紛れる。風でなびく草、タルコフスキーの草以上にでたらめなこのシーンによって、なんとか教授は子どもをもうけるのだ。教授の人工授精研究にあこがれた田舎娘ネネットが、教授の家のメイドなのだ。ネネットは山の中にあるせせらぎ、透明感のある水がゆったり流れている川で水浴するのだ。うっかり教授はその姿を見てしまう。笛の音が嵐を呼ぶように、娘の裸は教授の胸の中を平静でいられなくしてしまうのだ。笛の音と比べるとしかしあまりに平凡な心の動きなのだが、人工授精の先生が自然な生殖行為に誘われていく不思議と皮肉がまさにルノワールといっていい。

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