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クリスマスの休暇 (1944)

CHRISTMAS HOLIDAY

監督
ロバート・シオドマク
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3.50 / 評価:2件

異色のダービン映画

  • rup***** さん
  • 2017年3月6日 22時59分
  • 閲覧数 408
  • 役立ち度 1
    • 総合評価
    • ★★★★★

ディアナ・ダービンの主演作のなかでも異色中の異色と言われている作品を日本版DVDで鑑賞しました。
本作の日本版ソフトが出たのは、ひとえに1940年代のフィルムノワール作品に注目が集まるロバート・シオドマクの監督作品であるということだろうと思いますが、ダービンの映画として観ると、明朗快活なコメディタッチで展開される通常のダービン作品とは大きく異なる雰囲気。

ダービンの育ての親であるジョー・パスターナック(製作者)とヘンリー・コスター(監督)が相次いでMGMへと移籍してしまい、1人ユニヴァーサルに残された形になったダービンとしては、もともとは「アヴェ・マリア」や「庭の千草」などの脚本を書いていて、のちに実生活でダービンの夫となったフェリックス・ジャクソンがプロデュースをしていた頃の作品で、ジャクソンのプロデュース時代は、いろいろと新たな路線を開拓しようとはしていたものの、どうしてもダービン映画という範疇からは脱しきれず、本作でも今ひとつ振り切れていないという印象を受けます。

例えば、フォックスでは、ベティ・グレイブルが「I Wake Up Screaming」、アリス・フェイが「堕ちた天使」といったノワール作品に出演して、歌わずに演技一本で見せていたのとは違って、ダービンは、本作でもしっかり歌うシーンがあります。
特に、家族の団欒シーンで夫のピアノ伴奏で歌うアーヴィング・バーリンの"Always"は、個人的には「打撃王」でゲーリック(ゲイリー・クーパー)とエレノア(テレサ・ライト)がデートで行ったクラブで歌われていたことで記憶に残っている曲。
ダービンの歌声は相変らず美しいのですが、本作に関しては、ダービンの歌をじっくり聴かせるシチュエーションづくりがされていないので、聴き惚れるというところまでいきません。

シオドマク監督は、「Cobra Woman」(←カルトと呼ぶにふさわしい作品)や「暗い鏡」で、女優の二面性を引き出すために、前者はマリア・モンテス、後者はオリヴィア・デ・ハヴィランドに双子の姉妹という形で正と邪のキャラクターを演じさせているのに対し、ダービンが演じる本作のヒロイン(アビゲイル)は、夫ロバートが殺人犯として有罪判決を受けた後、ジャッキーと名前を変えて郊外にあるナイトクラブの歌手としてうらぶれた生活を送っているという設定なので、現在の姿と回想シーンに出てくる幸せだった過去の姿には、もっとギャップがあってもいいようにも思うのですが、そのすさんだ様子がダービンの演技からは感じ取れず、目元を強調したどぎついメイクでそれを補っているという印象。

ロバートの母親(ゲイル・ソンダーガード)から息子の矯正のために過大な期待をかけられ、夫の有罪判決後にはその期待に背いたと義母から告げられて罪の意識を感じ、夜の女として生きるよう自らを呪縛してしまうような複雑な人間心理を表現しなければならない役柄は彼女に似つかわしくない気がします。

ロバートの役は、まだMGMから他社に貸出しされていた時代のジーン・ケリーで、ケリーは歌とダンスを一切披露していないので、折角ダービン&ケリーというミュージカルスターの夢の共演が実現しているのに2人がデュエットするような場面が1つもないのは、今観るとやはりもったいない。

ロバートが殺人を犯している事実は隠されていないので、その謎でストーリーを引っ張っていくようなサスペンスもなく、ロバートの母親が息子に対し病的に過度な愛情を注ぎすぎている部分や、ロバートの性格の歪みといった部分も描写不足な感じ。サマセット・モームの原作を読んでいないので、私の理解が足りていないだけなのかもしれませんが…。
さらに、収監されていたロバートがどういう方法を取ったのか何の説明もなく脱獄しているというのも唐突な感じが否めません。
ただ、ロバートが表向きは明朗で気さくな人物として振る舞うなか、ふとした場面で幼児性や暴力性を垣間見せるような部分についてはケリーが上手く表現しています。

また、シオドマク監督の黒を基調とした画面づくりは印象的で、大聖堂での荘厳な雰囲気のクリスマスミサや天井近くまで桟敷席があるコンサートホールでの演奏会の場面を始め、限定された照明によって映し出される映像が深みを感じますし、高い位置にあるガラス張りの窓を覗くと中の様子が見られるようになっている家は造型的な面白さがありました。



ダービンが主演したサスペンスタッチの作品では、翌年の「Lady on a Train」がコメディ色を盛りこんでダービンの持ち味が十分に活かされていて、ナイトクラブで"Gimme A Little Kiss"を歌うシーンでは、ダービンが大人の色気をコミカルに発揮してとても魅力的なので、こちらについても日本版を期待したいところではあります。

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