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黒い太陽七三一/戦慄!石井七三一細菌部隊の全貌 (1988)

THE DEVIL 731, MEN BEHIND THE SUN/MANCHU 731 SQUADRON/MEN BEHIND THE SUN

監督
ムー・トンフェイ
  • みたいムービー 9
  • みたログ 47

3.18 / 評価:17件

「友好は友好、歴史は歴史」

  • yuki さん
  • 2017年11月5日 14時14分
  • 閲覧数 857
  • 役立ち度 2
    • 総合評価
    • ★★★★★

ネットではよく本作のグロテスクだけが強調され評価されるがそれは不当だと思った。とても真っ当によく出来た映画だ。

日本軍が行った(ということにしておこう)虐殺非道の人体実験映像は確かに目を見張るクオリティだが、全編を俯瞰してみると、以外とそういったスプラッタシーンの比重は少なく、むしろ日本軍人の内面に焦点を当てたドラマなのだということが分かる。
よく右翼からは「反日映画」との誹りを受ける作品であるが、しかし下手な邦画よりずっと丹念に日本人を描写している。日本軍人だからと言って即ち悪魔ではないし、それぞれの人間にそれぞれの事情があるのだということを丁寧に描いている。純粋な少年兵たちを、主役にすえることで特にそれを強調している。指揮官の石井四郎も冷酷な人間一辺倒として描かれておらず、尊厳を感じさせる演出も多い。嗜虐側を同じ人間と捉え、彼らを中心に物語を展開するのが、欧米圏の「ナチ女収容所シリーズ」とは違うところだ。僕はその点に誠実さを感じた。

グロ映画の大本営のような言われ方をよくされるが、むしろ『アクト・オブ・キリング』や『es [エス]』といったドラマ作品のような読後感を覚えた。あのような蛮行を行った軍人たちは全く異常だったが、しかし彼らを異常にさせたのは何なのか。そんな情緒的な感覚を刺激される。
ある少年兵のひとりは、熱烈な帝国主義者で、「だるま」に対する人道主義的な言説にひどく憤慨する。彼は「だるま」のひとりやふたりより、大日本帝国の存亡のほうがずっと大事だと考えている。一方で彼は自身の支那人の友人を、解剖実験の素材とされ苦しむ。
ここで訴えられているのは「反日本主義」ではなく「反帝国主義」だろう。少年兵が生きた実験素材を、権力者によって「人間」でも「支那人」でもなく「だるま」であると信じさせられるさまは、何だかオーウェル的なシーンでもある。
「反日、反日」とマントラのように唱える人間よりも、よっぽど思想的に成熟している。



右翼にしろ左翼にしろ、よく本作にマジギレしてる人がいる。或いはマジ褒めしてる人がいる。けれどもそれはヤコペッティの映画にマジツッコミするようなモノである。
本作の骨子は見世物映画だ。モンドだ。人間が不気味に死んでいくのを楽しむ映画だ。低俗なモノを低俗と貶すのはナンセンスだし、低俗なモノを崇高なモノと勘違するのもバカ野郎だ。

本作の目玉の拷問シーン、さすが、どれも素晴らしいクオリティのゴア映像だった。凍傷実験では、女性を寒地で張り付けにした後、変色した手先を引っ張ると、肉が手袋のようにズルっと抜け落ちる。苦痛ではなく恐怖によって叫び声を上げるのが良い。
減圧実験では「まるた」を気密室に入れて気圧を下げる。するとまるたの身体はみるみる膨らんでゆき、そしてついに腸が肛門から勢い良く飛び出す。この映像がとてもリアルで、本作の代名詞的なシーンなのも納得だ。
一体これらの実験に何の意味があるのか、全くもって意味不明だが意味不明だから面白い。


ゴアを目玉にした作品ながら、その映像はスプラッタと言うには静謐なシーンが多かった。先の減圧実験でも、下手な映画なら身体をまるごと吹き飛ばしてたりしてそうだ。本作は、ブッっとケツから内蔵が飛び出るだけだ。けれどその静かなリアリズムにこそ、真のグロテスクが存在することをこの映画は知っている。静かに人間が壊れていくさまを丹念に見せつけることで、フィクションというフィルターによって失われた残虐さを観客に再確認させる。

問題のあるシーンが二つある。一つは唖の支那少年が生きたまま解剖されるシーン。肌の質感や内臓など、あまりに真に迫っていた。中身は動物の内臓だとして、外皮はゴムにしては凄くリアルだったな、腕のいい美術だなぁ、と感心していたが、リアルなはずである。ソレは本物の少年の遺体を使ったとのことだった。
もうひとつはネコが無数のネズミに生きたまま捕食されるというシーン。こちらも最初はカッティングで上手いこと誤魔化してるな、という印象だったのだが、「窮鼠猫を噛む」という諺通りのシーンになると、どうも本当にネコが生きたままネズミの集団に食い荒らされてるようにしか見えない。

どちらもそれが本当だとしたら、現代の価値観では結構な問題だ。実は全体的なグロテスク度はそんなに高くないのに、日本では実質発禁にまでなってるのは、そういった事情なのかなと思う。

ネズミの集団が火を付けられて逃げ回るさまも壮大だったな。まぁ好事家は十分満足できる内容だろう。



因みに本作のタイトルバックの後、「友好は友好、歴史は歴史」(friendship is friendship, history is history) という標語が表示される。中国のことわざなのかは知らないが、深みを感じるとてもいい言葉だと思った。

詳細評価

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