エレナ・ソフォーノワの黒い瞳
- 一人旅 さん
- 2014年11月23日 15時09分
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ニキータ・ミハルコフ監督作。
銀行家令嬢と結婚したロマーノ(マルチェロ・マストロヤンニ)とロシア人女性アンナの愛の行方を描く。
「私には全てがあり、全てが無い」
諦観したロマーノの言葉が印象的だった。
妻や子ども、目に見える外見上の関係をロマーノは重視し、それを獲得しているが心の中は空虚そのものなのだ。アンナとの愛だけがロマーノにとって生きていく上で実のあるものだが、彼はアンナを見捨て妻の元へ戻ってしまう。一方のアンナはロマーノを愛し続け、彼が遠いロシアに帰ってくる日を待ち続けるのだ。愛と生きることに対する捉え方の方向性が、ロマーノとアンナの間で絶望的なまでに違う。だが、ロマーノはアンナを見捨てたが、破産し悲しみに暮れる妻を見捨ててはいない。「ロシアに愛する人がいるの?」という妻の言葉に「いない。絶対に」と答えたロマーノ。この言葉こそがロマーノの人生を決定づけた瞬間だった。アンナとの愛を犠牲に、ロマーノは妻に最後の優しさを示したのだ。
自分に正直に生きることの難しさ、目に見えない心の繋がりがもたらす生きる意味。頭の中で分かってはいても人生には迷いや戸惑いがつきものだが、自分が納得できるかたちで芯を通すことが必要だ。
アンナとの愛を知ることなく生きていれば、ロマーノはここまでの虚無感を感じることはなかったはず。だが、ロマーノはアンナとの愛と、妻との平穏だが虚ろな日常の両方を中途半端に追い求めてしまった。だからロマーノの人生には結果として何も残されていないのだ。
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- 泣ける
- ロマンチック
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