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月世界の女 (1929)

DIE FRAU IM MOND

監督
フリッツ・ラング
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3.00 / 評価:4件

ラング監督のもう一つのSF映画

  • カーティス さん
  • 2017年4月9日 18時29分
  • 閲覧数 272
  • 役立ち度 2
    • 総合評価
    • ★★★★★

『メトロポリス』で有名なフリッツ・ラング監督が手掛けたもう一つのSF映画ということで、前から気になっていた作品。ようやく見ることができました。

物語は極めてシンプル。月にある金脈を求めてロケットで月の裏側へと旅をする話です。…そういえば鉄腕アトムに似たようなエピソードがありましたが…手塚先生も本作を見たことがあったんですかね。

月を題材にした映画というと、映画草創期の『月世界旅行』と、50年代のSF映画ブームの発端となった『月世界征服』が有名ですが、本作はその2本を繋ぐ架け橋のような映画と言えます。
というのは、前半は『月世界征服』のような(当時の)最新の学説に基づいたリアリティを重視した作風でありながら、後半は『月世界旅行』のようなファンタジックで非科学的な作風に様変わりするからです。

前半は月探検隊のメンバーの奇妙な人間ドラマと、月ロケットの打ち上げが描かれます。前述のとおり、当時の最新学説に基づいたリアリティ重視の作風で、航路の距離や時間等の細かな数字がしっかりと決まっていたり、ロケットが宇宙空間でブースターを切り離す描写があったり、ロケット打ち上げ時のGに苦しむクルーたちを丹念に描いていたりと、描写がとても細かいです。90年近く前の映画なので今見ると非科学的に見えるところはもちろんありますが、リアリティを追求する製作者たちの意気込みはしっかりと感じられます。
特撮も時代を考えるとかなり良い感じ。とくにロケットが格納庫から打ち上げ台にゆっくり移動するシーンはワクワクもの。
ただ、ロケットが登場するのが70分すぎたあたりからで、それまでは退屈な人間ドラマが続くのが難点。『メトロポリス』や『ニーベルンゲン』と比べてもかなりスローテンポで、かつ魅力的な登場人物がいないので盛り上がりに欠けます。

後半は月の裏側で探検。前半のリアリティ重視の作風から一転、月に空気があって、登場人物が私服で月面を動き回るという『月世界旅行』の頃に戻ったような作風になります。前半とのギャップがすごくて、ちぐはぐな感じ。(一応、前半で伏線は張ってあるのですが)
解説によると、当時の時点で月面に空気がないことは科学的に証明されていたものの、俳優の顔が見えるようにあえてこのような描写にしたとのこと。さらに当時は「月の裏側なら空気がある」とする学説もあったとのことなので、製作者の考えが前時代的だったわけでは必ずしもないのですが、今の目で見るとどうしても陳腐に見えます。
科学考証は陳腐になってしまったものの、ドラマ的には後半の方が断然面白いです。荒涼とした月面を舞台に、愛憎渦巻くメロドラマが展開されます。惜しむらくは、前半同様、魅力的な登場人物に欠けることでしょうか。

同時期のラング監督の作品と比べるとかなり見劣りする出来ではありますが、ロケット打ち上げシーンや芸の細かい描写の数々等見どころはあります。また、前述のとおり、『月世界旅行』と『月世界征服』を繋ぐ架け橋のような映画に仕上がっているので、SF好きの方なら一見の価値はあると思います。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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