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荒野の決闘 (1946)

MY DARLING CLEMENTINE

監督
ジョン・フォード
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3.89 / 評価:131件

OK牧場の決闘を描いた古典的名作

今回取り上げるのは、1946年のアメリカ映画『荒野の決闘』。ジョン・フォード監督の作品レビューを書き込むのは「駅馬車」「我が谷は緑なりき」に続いて3作目だ。日本では翌47年に公開され、その年のキネマ旬報ベストテンでは外国映画の2位に選ばれている。主演はヘンリー・フォンダで、「怒りの葡萄」「十二人の怒れる男」、晩年の「黄昏」と並ぶ代表作である。
OK牧場の決闘という実際の事件を題材にしている。この決闘は何度も映画化されており、日本でいうと巌流島の決闘のようにアメリカ人にはおなじみの物語なのだろう。舞台となるトゥームストーンという町は銀の鉱山で栄えたという。僕はアメリカにツアー旅行したときにキャリコというゴーストタウンを見物したことがあり、この時の印象と映画を重ね合わせた。

邦題の『荒野の決闘』はシンプルな西部劇風だが、原題は「マイ・ダーリン・クレメンタイン(いとしのクレメンタイン)」と恋愛映画のようだ。どちらが映画の雰囲気に合っているかというと、僕は『荒野の決闘』の方だと思う。たしかに主人公ワイアット・アープ(フォンダ)がクレメンタインに惹かれる描写はあるが、やはり本作の主題は決闘西部劇であろう。
主題歌は誰でも知っている「雪山賛歌」のメロディーだ。♪雪よ岩よ我らが宿り、という歌い出しは原曲では♪オーマイダーリン、オーマイダーリン、オーマイダーリン・クレメンタイン、と歌われる。しかし冒頭のタイトルでフォンダの下に表示されるのはクレメンタイン役のキャシー・ダウンズではなく、酒場の女チワワを演じるリンダ・ダーネルなのである。

クレメンタインのファッションについて書いてみると、半袖のブラウスに日本の女子学生にも似合いそうなリボン、上着にコート、長いスカートに沢山の花をあしらった大きな帽子である。この花は生花なのか造花なのかという、しょうもない事が気になった。対するチワワの帽子はメキシコのソンブレロで、帽子が登場人物のキャラクターを表しているのが面白い。
泥酔した先住民の男が銃を乱射しながら暴れ、彼を制圧したワイアットが町の保安官となるシーンには心が痛む。アメリカ先住民はアルコールへの耐性がなく、酒で身体を壊す人が多かったという。オーストラリア先住民やポリネシア系住民も同様で、ハワイ旅行したときに訪れた「ポリネシア文化センター」ではお酒が店のメニューに一切なかったのを思い出した。

小型犬の犬種でもあるチワワはChihuahuaという綴りで、ローマ字読みするとチファファという感じか?クレメンタインがボストン出身の清楚系ならチワワはメキシコ出身のビッチ系で、トランプをしているワイアットのカードを盗み見て、イカサマ賭博に加担して水桶に放り込まれたりする。ワイアットがクレメンタインには最後まで紳士的に振る舞うのとは対照的だ。
チワワとクレメンタインは、ともに賭博師で凄腕のドク・ホリデイ(ビクター・マチュア)に惚れているという共通点がある。ホリデイに会うために駅馬車で一人旅をするクレメンタインの行動力は大したもので、ここまで想われるホリデイは幸せ者だと思う。しかしアープ兄弟とクラントン一家の抗争というメインストーリに大きく絡んでくるのはチワワのほうだ。

ワイアットの末弟ジェームズがクラントン一家に殺され、アープ兄弟が所有する牛の群れと、恋人への贈り物であった銀のアクセサリーを盗まれてしまう。クラントン一家のビリーはこれをチワワに贈るが、彼女はクレメンタインへの対抗心からホリデイからもらったと嘘をつく。これを聞いたワイアットはホリデイが弟を殺したと思い込み、二人はあわや対決へと発展する。
この銀のアクセサリーはまさに「呪いのアイテム」である。真実を話したチワワはビリーに撃たれ、医師免許を持つホリデイは麻酔なしで、クレメンタインを助手として緊急手術を行う。酒を消毒薬代わりに手に振りかけるシーンは、西部劇でおなじみの場面である。手術自体は成功するが、間もなくチワワは亡くなってしまう(失血性ショックと思われる)。

彼女の死によってクラントン一家はワイアットとホリデイ共通の敵となり、クライマックスの「OK牧場の決闘」の勝敗に大きな影響を与えるのだから、本作の正ヒロインはチワワと言えるだろう。しかしクレメンタインも、銃弾の飛び交う治安の悪いトゥームストーンが、演劇や教会・学校が導入される文教都市に生まれ変わる節目の時代を象徴する存在として重要である。
いちばん心に残ったのは、決闘の終盤でクラントン一家の父親オールドマン(ウォルター・ブレナン)が叫ぶ「アイク、サム、フィン、ビリー!」である。しかし最後に呼ぶビリーは、OK牧場の決闘の前にすでに殺されている。息子たちの死に錯乱した父親は、そんなことも分からなくなっていたのだ。人を殺した悪党が最後に見せた、人の親としての感情の発露であった。

詳細評価

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