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告発の行方

告発の行方

THE ACCUSED

110

aad********

5.0

ネタバレ何と言ってもジョディの演技が圧巻

本作の主演女優のオーディションにジョディ・フォスターが応募してきたとき、制作陣は彼女を選ぶつもりはなかった。 当時の彼女は、名子役としての名声は誰もが知るところだったものの、大人の俳優としての脱皮ができず、伸び悩んでいた。しばらく仕事もなかったので、スタッフたちにあるのは、ちょっと太目で健康的な女の子のイメージだった。悲劇的なレイプ被害者にはそぐわなかった。 だがオーディションに現れた彼女を見て、制作陣の評価は一変する。「この作品がうまく行かなかったから、作家になろうと思っていた」という彼女は、本作を起死回生の一作と捉え、スリムに変身し、役柄を完璧に把握した演技を披露してみせた。 彼女は頭脳派の俳優である。「現場に入る時は、自分のすべきことを完璧に頭に入れている」と評されるだけあって、動作や表情、セリフの一つ一つを、計算しつくしている。それをどう評価するかは人によるかもしれないが、演技に込める気迫が尋常ではなく、何度見ても魅了される。 最も印象に残ったシーンがある。検事のやり方に反発をいだき、自宅に押しかける場面だ。家に無理やり入ったジョディは、憤然とした様子ではあるのだが、入り口から部屋、部屋を覗き込み、検事を探しつつ奥に入っていくのである。もちろん彼女は検事が家の中のどこにいるか知らないのだから当然なのだが、ほぼまっすぐ相手のもとに向かう俳優の方が多そうだ。この芸の細かさには感服した。 衝撃的なレイプシーンにも彼女は細かく注文をつけて、この犯罪の暴力性を際立たせたそうである。そのプロ根性には舌を巻くが、いくら演技とはいえ、若い女性にはタフなシーンで、撮影が終わったあとはしばらくトラウマになったらしい。 彼女はこの渾身の演技でアカデミー賞を獲得し、子役からの脱皮にも成功して、押しも押されもしない名優への道を歩んでいくことになるのだが、そのキャリアを決定付けるスプリングボードとなった作品でもあるだけに、ファンである私の思い入れもひとしおだ。 ところで、彼女が演じたサラという女性を、まるでレイプされても仕方の無い「アバズレ 」のように評している人がいるのには驚かされる。この人物の役どころは、確かに品行方正ではないのだが、アバズレとは言い難い。ちょっと不良ぽいが、仕事もしているし、自分の住まいもある。生活水準は高いと言えないだろうが、それがレイプの免罪符になるわけもない。 実際、作品中、彼女のされたことをレイプではないと主張するのは、それが仕事である弁護士だけだ。 法廷場面でも、事件の目撃者が、被害者はレイプを誘発したと思うかと問われ、「いいえ」と答えている。 私も映画を見ていてそう思った。彼女は確かにセクシーにふるまいはしたかもしれないし、酔って羽目も外していたが、相手をベッドに誘う素振りはなく、「明日仕事だから帰らせて」と言っている。これでレイプされて当然と思う人は、セクシーに振る舞ってる女性はレイプしていいと普段から思っているのだろう。 被害を受けた当日には、警察が動いて犯人逮捕に向かうのも印象的だった。日本では考えられない。恐らく、被害者を何とか諦めさせようと説得するだろう。残念ながら、それがこの国の現実である。 余談だが、本作でレイプ犯の一人を演じたスティーブ・アンティンは、クリスティーナ・アギレラ主演の映画「バーレスク」の監督。この作品がとても良くて、今見直すとあまり憎めなかったりする。

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