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5時から7時までのクレオ

じゃむとまるこ

4.0

愛のためなら死ねる。

レビュタイから想像するような映画ではないのですが、でも下世話に言えばそうかな、と思います。 内容はとても知的です、何ったって実存主義的テーマを扱った、1962年制作のヌーヴェルヴァーグリヴゴーシュ派バリバリの女性監督アニエス・ヴァルダの出世作ですから、彼女は次作『幸福』で、日本でもその存在を知らしめたという凄い人なのです。 リヴゴーシュ派の監督と言えば先ず、アラン・レネを思い浮かべますが、本作はレネの名作『去年マリエンバートで』の翌年制作されています、レネとの共通点を多く感じさせますが、ラストが全く違う、その違いはさすが!と言えるものです。 で、映画は、『5時から7時までのクレオ』そのまんま。 フレンチポップスの歌手クレオが採血の検査結果を聞くまでの5時から7時までの揺れ動く心理状態を時間を追って描いています。 例えば、5時3分から5時10分のクレオ、という字幕が出てその時間のクレオが語られる、字幕が変わるたびに場面やエピソードが変わり、彼女が現実に立ち向かう勇気を得るという過程が90分というやや短めの尺で語られます。 タロット占いのカードのみがスクリーンに映し出され、指がカードを引き抜く、クレオの声、占い師の声、カラー映画だ、と思ったらカラー部分はこのシーンのみ、鮮烈。 モノクロ映画であり映像がスタイリッシュ、ガラスや鏡に映りこむシーンが多く 間接的な映像でクレオの心象を表現している。 自分は多分癌だろう、死ぬのではないか?そんな不安に圧し潰されようとしているのがよくわかるが、それだけの内容ではどうにも忍耐が続かない、睡魔に襲われる、何故だろうか、これは、ゴダールを見ると必ず寝てしまうという私のせいかもしれない。 一つ一つのエピソードは贅沢だ、訪ねてくる音楽仲間というか曲を提供してくれる作曲家にミシェル・ルグラン、ピアノを弾いて(おーー!すごいです)歌います、またある時のエピソードは映画中パントマイムというもので、J=リュック・ゴダール、アンナ・カリーナ、J=クロード・ブリアリとヌーヴェル・ヴァーグの代表格の方たちカメオ出演という贅沢さ。 最後にセーヌ左岸の公園で彼女は一人の男と出会う、休暇中で公園に来ていたフランス軍兵士だ(当時はアルジェリア独立戦争真っただ中)。 彼と出会ったことで、彼女の心に変化が起きる、現実を受け容れ闘おうという強さが生まれた。 彼らの間に淡い恋が芽生えた、それが生きる力になったのだろう。 男は言う。 戦死だなんて情けない、女のため、恋のために死にたい。 フランス人でなくては様にならない台詞、でも彼女はそこに心動かされる。 ”愛のためなら死ねる” このシーンで彼女の表情が一変する、恋のために生きようとする女に変わっている。 やはり女性監督が女性をよくわかって撮っている映画だと思いました。 このアントワーヌという兵士役の俳優さん、たいして魅力は無いのですが、声が素晴らしい、フランス語がとても魅力的に感じました。 ところでアニエス・ヴァルダの夫さんは『シェルブールの雨傘』『ロシュフォールの恋人たち』の監督ジャック・ドゥミなのです。 夫婦でフランスを代表する映画監督って凄いことです、夫婦とは何か、ということが日本とは根本的に違うように思います。

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