ムンクの「思春期」とファシスト
- achakick さん
- 2009年5月2日 17時22分
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- 役立ち度 6
- 総合評価
68点
まだ幼い弟たちの世話をしながら高校へ通うデルフィーヌ。
彼女がある日図書館で勉強していると、話したこともない女生徒クロードにいきなり声をかけられる。
「ここでは孤立することは自殺に等しいわよ」
彼女は立ち去り、しばらくして用をすませたデルフィーヌは図書館を出る。
すると目の前の吹き抜けを落下していくクロードの姿。
下を見ると血溜まりの中ぴくりとも動かない彼女の亡きがら。
上を見るとちらりと目を合わせて逃げるように立ち去る男の姿。
クロードの自殺とその男の関係にデルフィーヌはしだいに引き込まれていく。
サスペンス映画みたいなはじまりかたをする、湿っぽい青春映画。
クロードを自殺に追い込んだ男アクセルの人間的弱さが、デルフィーヌやクロードの弟ベルトランの生活をかき回す。
だけど、ストーリーの中心であるアクセルの内面描写がほとんどされないため、なぜアクセルはクロード、ベルトランの姉弟を憎んでいるのかがわかりづらい。
アクセルとデルフィーヌは貧乏育ちの苦労人。
クロードとベルトランは金持ちな家庭のお嬢さまお坊ちゃま。
クロードと恋人のような付き合いをするアクセルは、貧乏育ちとしての金持ちへの憎悪を抑えきれない。
ファシスト気取りでああだこうだと言っても結局彼は、恋よりも憎悪に捕われてしまうだけの臆病者。
彼自身わかっているけど止められない。
レイプされるみたいなかたちでデルフィーヌに跨がられるアクセルの涙が、アクセルの弱さと弱さからくる破綻を印象づける。
そんな弱い彼にもしっかりと、憎悪に負けた者へはね反ってきた憎悪が、罰としてくだる。
人によって解釈の変わるタイプの映画だと思うけど、自分はそんなふうにこの映画を感じた。
アクセルの部屋に飾ってあるムンクの「思春期」。
絵の中の少女がデルフィーヌにそっくりで、黒いカタマリを引きずってる感じもよく似てる。
なんだかんだでデルフィーヌの存在感がいちばん記憶に残った。
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