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遥か、西夏へ (1997)

西夏路迢迢/THE JOURNEY TO XIXIA EMPIRE

監督
ルー・ウェイ
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3.00 / 評価:1件

1000㌔の旅路の果てに

  • lamlam_pachanga さん
  • 2011年5月12日 3時40分
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    • ★★★★★

『さらば、わが愛/覇王別姫』の脚本家として知られる芦葦(ルー・ウェイ)の監督デビュー作は、11世紀に成立したタングート族国家・西夏を題材としたものだった。中国映画に詳しい人なら周知の事実だが、あの国で少数民族を題材とした映画は非常に珍しい。さすがに、数多くの映画で脚本を手掛けてきたベテランの目の付け所は少し違うようだ。

この映画を観たのは10年くらい前だったか。中国の友人から、「面白くないけどお前(私)好みだよ」と言われたのがきっかけだった。

なるほど。かなり珍しい題材である上に、普遍的な人間ドラマに仕上げている辺りは、確かに興味深く観ることが出来た。だが、「面白くない」と言うのは、単に彼が漢族だからだろう。北京に住む漢族の人間が、辺境の他民族の物語に退屈するのは想像に難くない。

西夏は、11世紀初頭に建国されたタングート族の国。現在の甘粛省と寧夏回族自治区に位置し、都は興慶(現在の甘粛省銀川)に置かれた。南東に漢族の宋、北東に契丹族の遼と面しながら、西夏は独自の文化を形成するほどに栄え、最終的には蒙古族の襲来により滅亡した。

映画は、建国して50年を経過しようとする頃の西夏を描いている。

先に断っておくと、この映画は、何かしらの歴史的事実を描こうとする「歴史映画」ではない。あくまで、西夏の兵士たちを通し普遍的な人間の姿を問い直す、「人間ドラマ」だ。勿論、背景として人頭税(他民族の子供をさらい自国の兵士として調練する徴税制度)を巡る当時の様子や、敵対する契丹族(遼)との戦闘が描かれるものの、それは映画の要諦ではない。

1087年の西夏。野利狐(倪大紅)に率いられた西夏の兵士10名は、漢族の村へ人頭税の徴収へ派遣される。村に到着後、早速10名の赤ん坊を徴収するが、遭遇した契丹族との戦闘によりひとりを失ってしまう。思いあぐねた野利狐は、街道沿いの井戸で水汲みをしていた妊婦をさらい、生まれてきた赤ん坊で穴埋めを図るのだが。

今、この映画の物語を思い出しながら書いているが、改めて、結構きつい話だなと思う。

一方で、映画を観ている時、この物語を現代の価値観で云々してはならないと肝に銘じていたことも思い出した。

現代を生きる私には人頭税と言う発想そのものが理解出来ないし、そんな(他民族の力を削ぎつつ自国の強兵策にもあてる)必要に迫られていた西夏の状況など想像もつかない。しかし、人頭税と言う税制が理に適っていることくらいは解るし、その歴史的事実を今の私の価値観で批判する気はない。

それに、これについては、芦葦自身が本作で答えを模索している。

彼は、遥か1000?の祖国(西夏)を目指す兵士たちと、彼らに連れ去られた我が子を追う母親の姿を捉え続ける。同時に、契丹族による執拗な追撃と戦闘を描き、やがて、隊を率いる野利狐がひとつの疑問を抱き始める姿を映し出す。

どうやら芦葦は、この野利狐の姿に人間の普遍性を見い出しているようだ。

少数民族の文化、風俗はもとより、歴史に裏打ちされた厳然たる悲劇性など、本来が脚本家である芦葦は、多分、そう言ったことも描きたくてこの題材を選んだのだろうが、遥かなる旅路の果てに野利狐が辿り着いた結論には、普遍的な人間の姿と、その姿を尊ぶ(或いはそう願う)芦葦の想いが溢れているように感じる。

その道程と結末には私も同意したくなっただけに、もう少し脚本を練ることは出来なかったのかと思う。

確かに、このままでも(私には)十分に興味深い映画だったことは事実だ。

だが、映画中盤から後半にかけて、特に映画の肝とも言うべき野利狐の変化の全てを、妙に説明臭い台詞に頼ったのはいただけない。その変化に説得力を持たせるためには、何かしら効果的なエピソードを挿入すべきではなかったのか。

人間ドラマは、他のどのジャンルより、説明描写に頼ってはならないと私は思う。

歴史を背景に人間の普遍性を描きたいのであれば、それはなおさらだろう。

『遥か、西夏へ』。その過酷な1000?の旅路の果てに、野利狐は何を見たのか。

その結論に感動するためには、何よりも動機が必要だったはずなのだが。

それだけは、今も残念に思っている。

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