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ガタカ (1997)

GATTACA

監督
アンドリュー・ニコル
  • みたいムービー 876
  • みたログ 6,092

4.13 / 評価:2676件

青春小説のようなSF

  • bus******** さん
  • 2020年9月13日 1時59分
  • 閲覧数 798
  • 役立ち度 4
    • 総合評価
    • ★★★★★

会社の映画好きに薦められて鑑賞。訴えようとするテーマは普遍的でエネルギッシュなものなのに、近未来を舞台にむしろ淡々と、時にはミステリアスに物語が進むのが特徴的だった。

遺伝子操作でなく、両親が自然に愛し合った結果の息子として生まれた主人公ヴィンセント。彼は30歳まで生きられないと宣告されている。その後生まれた弟は遺伝子を操作された「適正者」。圧倒的な能力の差を見せつけられながら、ヴィンセントの胸中には強烈なコンプレックスと宇宙飛行士になるという夢が育っていく。ある日競泳でその優秀な弟に勝ったことがきっかけで、ヴィンセントは夢を実現させるために人生を賭け、別の「適正者」になりすまして宇宙局「ガダカ」に潜入する。

ヴィンセントの夢は実は非常に危なっかしく、無謀とも言えるものだ。医師の宣告通りなら、彼の脆い身体は宇宙船の中で異変を起こす危険性が高い。宇宙へ旅立つ前に命を落とす可能性もあるだろう。それでも後先を考えず周囲を欺き努力し続けるヴィンセントは、ひたむきで眩しい存在に映る。そんな彼をいつしか周囲の登場人物が、そして我々視聴者までもが応援するようになる。
ヴィンセントが大人になっても競泳するシーンは青春ドラマのようで、自分自身も昔ムキになって優等生の弟と遠泳したり、かるたで競ったりしたことをふと思い出し笑ってしまった。「少年よ大志を抱け」という言葉があるが、大望は大抵、こうした承認欲求に端を発するのかもしれない。

ストーリーは言うまでもないが、キャストが皆それぞれいい演技をしている。特にヴィンセントの協力者ジェロームを演じる若き日のジュード・ロウが素晴らしい。挫折した「適正者」の苦悩と誇りが、多くを語らずとも実に細やかに表現されている。
ジェロームがヴィンセントに託した髪の毛には様々な解釈が出来るが、私には純粋な「自分も宇宙へ連れて行ってほしい」というメッセージのように受け止められた。自分のDNAを使ってガタカに潜入したヴィンセントを、ジェロームは分身のように感じていたのではないだろうか。ヴィンセントの夢はいつしかジェローム自身の夢になっていた。だからこそ、夢を叶えたヴィンセントを送り出し、彼はある種の達成感を持って「旅」に出る。その表情に悲壮感はなく、かけた銀メダルは炎の中で金色に輝いていた。自分は優秀だったんだというジェロームなりの矜持が感じられ、胸を打たれずにはいられなかった。

一方、宇宙へ旅立ったヴィンセントも地球へ無事帰還出来るのかはわからない。夢を実現できたとはいえ、ラストシーンはハッピーエンドと言えるのか疑問が残る。憧れ続けた生の宇宙は、もしかしたら彼が目の当たりにする最後の風景になるかもしれない。そんな想いで眺めるからこそ、なんということのない宇宙の映像が近年の技術を凝らしたSF作品より遥かに余韻を残して我々の視覚に訴えかけてくる。この映像と共に流れる音楽もただただ美しい。

なんでも点数化・データ化され、合理的で平板な感情の持ち主の方が重宝されがちな現代社会。「ガタカ」は、その中で初志貫徹しようともがきながら懸命に生きる人の心のともし火になるような映画であり、シンプルなテーマを優れた脚本・役者・音楽等で演出すれば視聴者の想像力で充分補えることを証明してくれる名作だと思う。

※余談だが、手塚治虫「火の鳥」、武宮恵子「地球へ…」等の漫画好きな知人にも是非見てもらいたい映画。

詳細評価

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