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恋愛小説家 (1997)

AS GOOD AS IT GETS

監督
ジェームズ・L・ブルックス
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4.36 / 評価:815件

言葉と心はうらはらに

  • dr.hawk さん
  • 2016年5月22日 8時37分
  • 閲覧数 1802
  • 役立ち度 6
    • 総合評価
    • ★★★★★

DVDレンタル 字幕 2016.05.21


第55回ゴールデン・グローブ賞主要3部門に輝いた大人の恋愛ドラマ
原題は『As Good as it Gets』
監督はジェームズ・L・ブルックス(『ザ・シンプソンズ』)
脚本はマーク・アンドラス&ジェームズ・L・ブルックス


自己中心的で強迫神経症の恋愛小説家メルヴィン(ジャック・ニコルソン)はマンハッタンのあるアパートで暮らしていた
自宅で執筆活動を続ける彼はベストセラー作家であり、ファンも多い
隣人を含めほとんどの人間と距離を置き、衝突の絶えない人物である
彼のお楽しみは行きつけのレストランでキャロル(ヘレン・ハント)に給仕してもらうこと
ある日、仲の悪い隣人で画家のサイモン(グレッグ・キニア)が強盗に遭い、彼の犬を預かることになることで彼の日常に変化が訪れる


この物語は偏屈で毒舌がキツイために他者から距離を置かれる男の、変化の物語である
本心を明かさない、あるいは上手く表現できない彼を疎ましく思う人間は多くいるが、その中で唯一キャロルは普通に接してくれる
だが、ある日病弱の息子を持つキャロルは、彼の毒舌が息子に及んだことに激怒する


メルヴィンの根は正直で親切心に溢れているが、自分を知的と称するように他人を見下している面がある
また人種差別やゲイへの差別など、問題発言も多く、彼に近寄る人間を悉く傷つけてしまう
彼の強迫神経症は治癒の見込みすらなく、処方薬を拒もうとし、原則変化を恐れている
自分の決めた規律のようなもので日常を制し、極端に言えば、そのルートから外れることは「トラブル=混乱」になってしまう


キャロルは病弱の息子を持つ母親で夫はいない
母を含めて3人で暮らしており、ロクな医療にかかれないほどに貧乏である
キャロルもまた大きな問題を抱えており、それは息子依存であることだ
彼女の人生は息子のためにある
その現実的な愛は、時に過剰とも言え、息子に良質な医療が施され回復へ向かう中で、人生の目的を失って「トラブル」を起こしてしまう


サイモンは画家として成功していたが、強盗に遭って状況が一変する
顔に傷を負い、展示会も失敗
いきなり多くのトラブルに見舞われてしまうが、彼の本当の「トラブル」は過去の出来事に由来する


三者三様の「トラブル」
いずれも治癒困難な症例でありながら、それぞれがそれぞれを少しずつ癒していく


三人で出掛けることになったボルチモアへの旅行
サイモンが両親に金を無心するために行くはずが、メルヴィンはどこか浮かれていてキャロルとのデート気分である
だがその旅先でも本心を言えずに悪態をつき、キャロルを怒らせてしまう
キャロルは怒り心頭のままメルヴィンとの距離を置いたが、キャロルの素の心を感じて、サイモンの創作意欲が戻ってくる
彼が画家として成功していたとき、表情の一瞬の変化にモデルの本性が現れ、それを切り取ることが彼のモチベーションだった
それを思い出すのだ
サイモンは精神的に立ち直り、両親の元へ行くことをやめる


旅を終えて、傷心のキャロルは二度と会わないとメルヴィンに告げたが、その夜自分の言葉の酷さを詫びる
彼女もまた、精神的抑揚が強く、感情的すぎる一面から自虐的になる傾向があった


ラストシークエンスのメルヴィンの告白

キャロルの電話を受けて、混乱するメルヴィンをサイモンは諭す
「恥をかくことを恐れるな」
メルヴィンの心の殻の正体は、自分をよく見せたいと思う虚栄心からくるものであることがわかる
常に自分を他人より上に見せたい
「言葉」を仕事にしている者ゆえに、強い「言葉」を選んでしまう背景がそこにあった

彼が最後に紡いだ言葉はとても素晴らしい
自分の変化を受け止めて、そしてそれに感謝する
自分に影響を与えたのはキャロルであり、それは最高の女性だと褒め、そして、そのことを知っているのは自分だけだと言い、誇らしいとまで言う
最上級の賛辞、その上質な告白は「私のことを何も知らない」と思い込み距離を置こうとしていた彼女の心を動かす

言葉で、しっかりと愛を確認したいキャロルは、自分の教養のなさにコンプレックスを抱えている
彼女にないものを持つメルヴィン
そしてまたメルヴィンに足りないものをもつキャロル
補完しあう大人の恋愛は、素直になれれば、必然的に寄り添う


良質な会話劇に加えて、俳優の細かな演技が優れた作品
先を読ませない脚本とキャラクター造形や細かな心理描写をきちんと描いた紛れもない良作である
この物語の良さが分かるには歳月が要るが、人生に思い悩んだときに観るほうが、感情移入しやすいのではないかと感じた

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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