雨が降るまで
- 文字読み さん
- 2008年10月31日 22時46分
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1997年。アレクサンドル・ソクーロフ監督。母の死を看取る息子。世界の果てのような孤独な場所で、二人だけの、濃密すぎる、死を待つ時間。早朝の二人の散歩(といっても毛布にくるまれた母を抱きかかえて歩くのは息子)、帰宅後の会話、息子一人の悲しみの彷徨、そして母の死という1日の出来事。降りそうで降らない雨が、母の死後に、暗転した画面の向こうで、降っています。
廃墟やだれもいない道など、うち棄てられたような「終わった後」の世界のなかで、二人は世界をただただ眺めています。特に、小さなヨットが浮かぶ海を眺める息子のさみしさ。号泣してしまうのは、母の死の予感もあるけど、この世界の寂寥感です。
朝もやの白い画面とか太陽でゆがんだ画面とか、映像ももちろん美しいのですが、冒頭から鳴り響く嵐のような風の音、暖炉ではぜる火の音、母を抱いて歩く靴音がすばらしい。音の映画でもあるこの作品の最後に雨の音が響くのはさすがというほかありません。
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