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(1997)

河流/HE LIU

監督
ツァイ・ミンリャン
  • みたいムービー 23
  • みたログ 66

3.76 / 評価:29件

ある台湾核家族の風景

  • 一人旅 さん
  • 2016年1月20日 12時13分
  • 閲覧数 1221
  • 役立ち度 6
    • 総合評価
    • ★★★★★

第47回ベルリン国際映画祭審査員特別賞。
ツァイ・ミンリャン監督作。

ある日を境に首が曲がってしまった青年シャオカンと家族の日常を描いたドラマ。
映画の水死体役を引き受けたシャオカンは油の浮かんだ淀んだ河に浸かる。それがきっかけとなり、シャオカンの首は不自然に曲がった状態になってしまう。
シャオカンが感じる首の違和感、歪み。それはシャオカンの家族の歪んだ関係を象徴している。シャオカンは両親と一緒に暮らしている。だが、シャオカンの家族の風景には終始違和感がつきまとうのだ。
父親は食卓で一人黙々と食事する。近くをシャオカンが通り過ぎても、食事に誘うことはおろか話しかけることすらしない。トイレを使った後に電気を消さないシャオカンに対しても何も言わず、父親自ら渋々消しにいく。そして、ゲイである父親は夜な夜な町へ繰り出し、気に入った男を相手に肉体を貪りあう日々。
一方の母親も欲求不満な気の毒な女。普段はエレベーターガールを仕事にしていて、狭いエレベーターで上下を行ったり来たりする単調な毎日。帰宅した母親は殺風景な部屋で一人アダルトビデオを観て悶々とする。直前の場面では首を痛めるシャオカンに母親自ら棒状のマッサージ器を手渡す。そういうことか・・・何とも気持ちの悪い家族の風景。母親は性欲を抑えきれない。愛人の男に体をしつこく絡めるが、全く相手にされない悲しみ、孤独。
劇中、シャオカンの父親と母親が二人だけで話すことはおろか、まともに目を合わせる場面すら全くない。画面の手前に母親、後方に物語とは関係のない行動をする父親の姿がぼんやりと映り込むだけ。父親と母親の間に存在する目には見えない大きな隔たりを確かに感じられるのだ。
そして、シャオカンの曲がった首を治そうと両親は懸命に努力する。マッサージや鍼治療、お香で邪気を取り払おうとする等あらゆる手段を使って治療させる。鍼を刺されるたび苦悶の表情を浮かべるシャオカンの姿に笑えてしまう。
シャオカンの歪んだ首に真正面から向き合う両親。両親はシャオカンの歪んだ首を通じて家族の歪みを認識し、父親と母親それぞれ違ったアプローチでシャオカンの首を治そうとすることで、家族の歪みそのものを解消しようと無意識下でもがいているように見えるのだ。父親と母親は歪んだ家族の関係改善に向けて直接的に話し合ったりはしないが、シャオカンが二人の仲介者となって両親が歪みに向き合うための機会を提供している。ある意味、シャオカンは家族の歪みの犠牲者と言えるのだ。
そして、家の雨漏りは次第に激しさを増していく。家族の亀裂に呼応するかのように天井の亀裂も拡大していく。やがて河のように水浸しになる部屋。家族が取り返しのつかないまでに自己崩壊してしまった瞬間だ。
家族の歪みを目に見えるかたちで表出させ、それに向き合う家族の様子を淡々と映し出した作品。日の光に包まれた穏やかなラストカットはむしろ絶望的で、現代家族が抱える他人同士のように殺伐とした関係性を浮き彫りにしている。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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