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プライベート・ライアン

プライベート・ライアン

SAVING PRIVATE RYAN

170

Kajjon

5.0

まさにFUBAR(どうしようもなく滅茶苦茶)

戦争オタクの変態監督が撮った戦争映画です。 約2ヶ月でクランクアップしたという全速力の撮影は、終始、とにかく戦闘戦闘でお腹いっぱい。 一人の兵士を救出せよというミッションは、物語の設定としては非常に面白い。 さらに名監督らしく、キャラの配置は万全です。 元教師でリーダーとして不完全な主人公の将校。 彼の右腕の肥満漢。 主人公に反骨気味のニューヨーカー。 天才スナイパー。 実戦経験がなく、臆病ながら物語のキーマン。 一度は捕虜になるも、解放され、再び主人公と対峙するドイツ兵。 彼らがそれぞれに絡み合っては、戦闘の合間に様々な人間模様を見せますが、彼らの言動は、激越な火力によって結局は殆どの者が沈黙せざるを得ません。 劇中、臆病なアパムが言います。 「戦争は、極限状態で互いを人間として見極めることができる」 ところが、主人公は返します。 「戦争を肯定的に見ようとしたエマーソン(超絶主義で知られる思想家)の言葉だ」 彼の指摘通り、戦闘シーンでは人が人を見極める余裕などないことが痛烈に描かれ続けます。 両手を上げ、降伏の姿勢のドイツ兵に対し、「何を言ってるのか分からん」と射殺する米兵。 この、降伏の姿勢を向ける者を撃つシーンは何度も描かれており、観ている側も、そのある種の仕方なさを感じます。 なぜなら、眼前の風景こそ、見極めなどという余裕のない戦争という極限状態だからです。 戦争を表現する以上は、酷いシーンを入れることは止むを得ないのは言うまでもなく、主題、演出、全体のバランスと、欠点らしい欠点のない映画です。

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