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トゥルーマン・ショー (1998)

THE TRUMAN SHOW

監督
ピーター・ウィアー
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3.86 / 評価:1,660件

扉のむこうはアメリカでした。

  • kfe***** さん
  • 2019年11月17日 10時54分
  • 閲覧数 601
  • 役立ち度 2
    • 総合評価
    • ★★★★★

アメリカにおいてリアリティ・ショウは、常に一定の視聴率が取れる人気コンテンツである。当初の主流は、セレブ達の常識はずれの生活や乱脈な恋愛模様を晒し物にする、いわゆる見世物小屋系だったのだが、最近はベーリング海で蟹を獲る人だとか、アラスカで金脈を探す人だとか、極限生活描写系へと主流は移行している様である。あるいは全く逆の方向に進み、質屋さんの割とユルイ日常を映したりする番組もある。兎に角、アメリカ人はリテリティ・ショウが好きなのである。

本作はそのリアリティ・ショウの究極を体現したような代物で、一人の男の人生をその誕生からずっと、24時間365日撮影し続け、全世界に放送し続けている。セットして巨大な町を作り上げ、隠しカメラを数千台用意し、住人も全て役者という、手の込みようである。そして、知らぬは映される男一人のみ。いかに愉快で気さくな人々に囲まれていようが、仕事が順調だろうが、恋人ができようが、それは仕組まれた筋書きである。はっきりいえば、それは完全管理・監視社会であり、監獄である。否、それ以下であろう。監視社会にせよ、監獄にせよ、そこにいる者は「自分が見られている」という事が分かっているのだから。本作の感想に胸糞が悪いという言葉が並ぶのも、無理はない。

その流れからして本作は、監視社会の恐怖だとか、人の人生を商品の様に消費する人間のおぞましさの告発、というセンテンスで語られがちである。だが、私はそれにすこし異を唱えたいと思う。私はむしろ、これはアメリカ人の自己礼賛映画ないし、自己のアイデンティティ確認映画であると思っている。

1776年、イギリスとの独立戦争に勝利したアメリカは独立を宣言。ここにアメリカなる国は誕生する。その新生アメリカの主要な国民は、イギリスを始めとするヨーロッパ各地からやってきた移民で、その多くは本国における貧困や差別から逃れてきた人々である。その中でも結構な数を占めたのが、思想信条の自由を求めて、新大陸に渡った人々である。当時のヨーロッパ諸国は、近代が始まりつつある時代とは言え、中世以来の価値観は強く残っていた。それは王族と教会であり、それに権威を与える「神」であった。

「神は全てをお見通しで、その采配に間違いは無く予定調和である。その神に祝福された(王権神授説)王は当然に人の上に立ち、その教えをたれる教会は神の家である。それに異を唱える者は地獄に堕ちるであろう。否、神になり代わって王と教会が地獄に落とす」。これが当時の人々の一般的な認識であり、その認識の下に王は社会秩序を構築していたのである。

とはいえ、いかに「神」の名を振りかざそうが、所詮は人間のする事で、その統治には不備や不足が必ず出てくる。すると「王が万能ではないという事は、それを選んだ神が万能ではないという事の証明なのでは?」等と言い出す、恐れを知らぬ輩が一定数出てくる。中世ならば、王はそれらを殺して一件落着なのだろうが、大洋をわたる船が現れた時代にそれは通用しない。「古い価値観のない土地で、俺らだけの手だけで、自由に一からやってみよう」。アメリカはそんな人々が集って出来た国なのである。

以上を踏まえた上で本作を振り返ってみれば、黒幕たる番組プロデューサーに、いかにも「神様然」としたイメージが付与されるのも納得である。地上ではない高い場所におわし、全てを見通して、予定調和をもたらす。その「神」の手のひらの中で本心を隠し、違和感を我慢してさえいれば、安全に生きてゆける。

無論、ザ・アメリカンたる主人公は、そんな甘言や脅しに屈しない。例えその先に危険や困難が待ち受けていても、「俺だけの手で、自由に一からやってみる」方を選ぶのである。そして、それを見る視聴者達は一様に拍手喝采を送る。まさにアメリカ礼賛である。しかも全世界の視聴者にやらせているあたりが、実にあざとい。「人類の進む道はこっちですよ!」と説教をされている様な気分である。

そんな自由な国アメリカで、人の生活を覗き見る様なリアリティ・ショウが流行るのも、不思議といえば不思議である(他人がどう生きようが、自分に害がない以上、それは他人の自由のはずである。故に、気にする必要もない)。もしかしたらアメリカ人は、「TVの向こうのお前よ、お前はちゃんと自由に生きているのか?」等と問いつつ、番組を見ているのかもしれない。あるいは「TVの中のあいつは不自由だ。反面教師にせねば」などと考えているのかもしれない。あるいは、楽天的なアメリカ人らしく「何も考えていない」のかもしれない。

詳細評価

物語
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演出
映像
音楽

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