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最前線物語

最前線物語

THE BIG RED ONE

110

ben********

4.0

戦場の日常をコミカルに、悲しく、深く

;評価の基準 戦争の日常をコミカルに描いているので、戦争映画として途中の描写や展開に物足りなさを感じるところもあるが、冒頭と結びのシーンに織り込まれているメッセージ性に感じ入る。 ;レビュー 全体として、戦争に従軍している中、誰かを殺すことが日常と化してしまっている兵士達の様子を、子さんの軍曹と4人の若い兵士を中心にして描いています。タイトルに「コミカル」と書きましたが、決して明るい雰囲気の映画というわけではありません。 悲惨な戦争をその悲しさ・残酷さだけを前面に押し出して描くのではなく、敢えて私たちの日常にあるような愉快さや面白おかしさを自然に入れてみせることで、逆にこの5人、殺し合いという行為が日常と化してしまっているのだという現状をじわじわ浮かび上がらせます。 日常ととしての戦争を浮かび上がらせる以外、もうひとつ大きな問いかけがあります。 それは、「従軍した兵士が日常に戻ることに対する恐怖・あるいはそれによっておこる大いなる矛盾」についてなんじゃないかと私は思います。 殺し合い、と先ほど書きましたが、この映画ではkillとmurderという表現がたびたび出てきます。 戦争という状況下においては、人を殺すこと、つまり平時では「殺人」とされる行為が正当化され、またそれを強いられる状況にあります。戦争においては、相手の兵士を殺すことはmurder=殺人ではなく、ただのkillとされている。 では、厳密にいつから、いつから自分が行ってきた行為は殺人となるのか。 戦争が終わって、ただの「日常」に戻ったら、自分が戦時中にしてきたkillの行為はどうなるのか。 映画の冒頭と最後よって投げかけられるメッセージからは、この恐ろしさがじわじわとこみあげてくると思います。 プラトーンのような衝撃的なシーンや、実態となって表れる不条理を描いているわけはありません。 ただ、「安心して観られるものだなぁ」と安心しているところにふと迫る戦争の不条理さがあり、その犠牲者たる兵士の視点から問いかけることによって静かだけれど確固たる「反戦」の意味も込められているのではないかと感じました。 感じるのは多くの戦争映画にある「凄惨な」恐ろしさではなく、段々染みわたっていく、静かな恐ろしさです。

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