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ライフ・イズ・ビューティフル

ライフ・イズ・ビューティフル

LA VITA E BELLA/LIFE IS BEAUTIFUL

117

kan

1.0

辟易する自己主張

感情移入ができず、見終わるのが苦痛でしかなかった その理由は、劇中の主人公にとって都合がよく話が進行する、というだけでなく 映画製作者でもある、中の人にとって都合いいように話が進行する、 という、自己中の二重構造にあるように思われます こんなストーリーにすれば、こんな展開だと、こんな場面なら、観客が感動するだろという意図があまりにも透けて見えすぎ クライマックスは、もうミエミエなんで、興ざめでした 子役と動物には勝てないとよくいいますが、この作品はあまりにそれを狙いすぎてる 大戦末期のイタリアにおけるユダヤ人問題との関連でこれを見ましたが… この記事における扱いに尽きています https://news.yahoo.co.jp/byline/satohitoshi/20211211-00272154 この作品に批判的な評価に対する反論として、「戦争映画ではない」とするものも少なからず見受けられます。つまり、史実としてのホロコーストを描きたかったのではなく、むしろそれを背景事情として家族愛を書きたかったのだ、と しかし、少なくとも監督自身は、そういう捉え方を否定していて https://www.theguardian.com/culture/1999/jan/29/awardsandprizes ユダヤ人迫害問題の団体に事前に脚本を送って承認を得てもいます そもそも、家族を襲うカタストロフィとしてなら、何もホロコーストでなくても 地震火事台風…何でもよかったわけで、背景事情だから、雑に描いていいということにもなりますまい しかも、ドイツやイタリアといった当時の政権の戦争責任や迫害の実態について、誤った印象を抱かせかねないとすれば、その点は看過できないことのように思われます 具体的には、映画ではドイツ兵『だけ』が、まるで占領軍のようにイタリア国内からユダヤ人を連れ去ったように描かれていますが、そのように理解したとすれば史実に反します 実際には、ドイツとともに枢軸国だったイタリアは、大戦末期に2つに分裂し、ナチスの傀儡で建てられた北部のイタリア社会共和国において、ユダヤ人迫害が行われ、イタリア国内にも収容所が設けられました つまり、収容所には「イタリア語を話す弾圧者」はいたのです  映画でも描かれているように、イタリア国内でイタリア人によるユダヤ人迫害も実際にあったので、その究極が収容所への強制移転とさらには殺害です つまりイタリアにもホロコーストの責任はある それをこの映画は希薄化している ファンタジーならファンタジーとして、もっと描きようがあったし、 ギャグのセンスも自分には全く肌に合いませんでした 主演本人が、かつてサーカスでピエロ役を長くやってたってのがよく分かる しみついた「芸」が臭すぎです 生真面目な他人の帽子を取り合うところとかはサーカス芸を映画に取り入れているところかとおもうけど、舞台ではなく映像でこれをやると、むしろ反感しか買わない気が 小さな子供兄弟の名前が、ベニートとアドルフで、たがいに喧嘩する、誰の目にも寓意は明らかだけど、アメリカ人とかにとっては、ムッソリーニとヒトラーのファーストネームを知ってることが知的レベルが高いことになるのだろうか? 見てる側にはあまりにベタで面白くもなんともない 戦時体制のプロパガンダ漫画とかならまだしも、としか思えません 自身もつまらない映画をいくつか出させてもらった吉本芸人の一人がこの映画の笑いを絶賛しているらしいが、さもありなんという気がします 非常に好意的な解釈として、伝統のコンメーディア・デッラルテの作法に従っているとの指摘の余地もないではないけど、アレッキーノ的要素の他には、イル・ドットーレが思い当たるぐらい、パンタローネもいることはいるが、肝心の後半には出てこない そもそもコンメーディア…に必要な人間相互の緊張関係はない 妻子供に対してすらない 単に主人公の聞き役というパッシブな役柄でしかない つまりコンメーディア…なんてもんではなく、まさにサーカスのピエロの独白で終始するわけです 苦痛というより、なんか怒りがこみ上げてくる よく、「この映画を観て、映画の素晴らしさを知りました…」みたいな経験が語られることがありますが、自分にとっては、この映画は、その真逆、この映画をみてしばらくは、他の映画を観ることはもちろん、これまで観た別の映画を思い出すことすら嫌になるほど、映画全体をしばらく嫌いになるきっかけになった作品でした 言いがかりでも何でもなく、映画はどんなものでも一種の「ウソ」なわけで、ウソをウソとは思わずに没入してこそ楽しめるのに、この映画のウソの作り込みがひどすぎるものだから、他の作品でも、ウソとしてしかみえてこないからです 下手な芝居を観てると、舞台装置の白々さとか俳優のどぎつい化粧に気を取られるのと同じです この映画に対する怒りの理由は、監督が「人生をなめてる」にあるんだと思います その辺りは、医官が主人公を救うかにみえて全然その気がなかったストーリーで 少しは本人も自覚している、ないし「人生をなめてるからこそ生き抜ける」という哲学なのかもですが、共感はできないです イメージワードを敢えて言うなら、「嫌悪感」です ごめんなさい…(てか、謝ってもらいたいのはこっちの方なんですが)

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