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日本誕生

日本誕生

THE THREE TREASURES

182

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5.0

映画が娯楽の王様だった時代

 本作制作は1959年。昭和34年だから、それは私が生まれた年。 東宝映画1000作品目を記念して製作された東宝所属オールスターキャストの大作。 当時、スターとは映画スターのことを言った。  本作、噂には聞いていたが、未見だった。 私のオヤジもオフクロも、観たのだろうか。 映画隆盛の一時代。 半世紀前に、このような邦画が製作されていたことを思い感無量。  今や、映画は、制作・配給・興行が細分化されてしまっているが、この当時、大手映画会社は、専属の撮影所で専属の監督を抱え、専属のスターを要していた。  現代では、配給・興行に比較して、映画製作会社は大変なリスクを追うシステムとなっている。映画制作の金、人、モノ。 制作会社がそのリクスを追い、興行的失敗は、収入の案分率に直結して、制作会社を直撃する。映画の品質は制作の努力と熱意あればこそ。映画制作にかかわる人たちが、育ってゆく環境を整備することが、必要な時代ではないのだろうか。  なにも大作が良い映画であるとは思わないが、この時代の映画製作のシステムでこそ、本作のようなオールスターキャストの映画も興行できたことを思えば、もう、このようなワクワクする娯楽邦画大作には、お目にかかれないのかもしれない。  本作は、おそらく日本神話が先にあった企画ではないように思う。 1000本記念企画として、東宝のスター勢ぞろいで一本撮ろう、それにはどんな映画が良いか、いくつかの企画の中から「日本神話」が選ばれたのではないだろうか。 何せ、日本の神様は八百万。役の振り分けには、これほど適した物語もないだろう。 本作のキャスティング、さすが東宝という顔ぶれ。   まずは、スサノオの男命とヤマトタケル、ダブルキャストで世界のミフネ、三船敏郎。 志村喬、小林桂樹、加藤大介と来れば、もうこれだけで黒澤映画が一本撮れてしまう豪華メンバー。 対してクマソの敵役に、ヤクザ映画でお馴染みの鶴田浩二が絡む。  東宝女優陣も豪華絢爛。 アマテラスオオミカミには、原節子。 倭姫役で、田中絹代。 この二人だけでも凄いところへ、脇を固める杉村春子、司葉子。 兄比売には環三千世だ。 音羽信子は天の岩戸の前で踊りを踊った天宇愛姫役だが、この踊りが素敵素敵。  アマテラスが岩戸を開けるのを待ちながら、音羽信子とともに、はやし立てる神々には、榎本健一(エノケン)左卜全、三木のり平、柳家金語桜 東宝喜劇映画陣が、岩戸を取り囲んで囃すこと。まっこと賑やか華やか。  東宝怪獣映画、怪奇映画ファンにはおなじみの、水野久美・平田明彦・田崎潤もちゃんと出てくる。  それから、本作をDVDで観賞していて「インターミッション」が入るのも嬉しかった。 「インターミッション」途中休憩である。昔の洋画大作には結構多かったが、私は映画館だと、リバイバル上映でしか体験したことがない。 邦画では「七人の侍」にはインターミッションがある。 これも再上映の時に邦画では初めて体験した。 長尺が大作の証だった時代。今のように、映画館の回転率を考えて100分超が最適などというせせこましい時代ではなかった。 インターミッション付きの「風と共に去りぬ」とか「ベンハー」などは、もうそうそう再上映されることはないだろうけれど、黒澤の「七人の侍」は今でも、ときおり再上映されているので、もしご覧の節は、途中休憩という間を楽しんでいただきたいと思う。  その間におしゃべりしたり、トイレや売店に行くだけのことではあるのだが、映画とは歌舞伎や演劇同様、まさに「興行」だったんだなと、実感できるひと時と思う。 本作のパワーと、現代に繋がる邦画の歴史を支えた映画陣の皆様に敬意を表して  ☆5

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