もはや歴史資料
- mit***** さん
- 2010年2月14日 20時59分
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日本映画の歴史の記念碑的な名作だ。言論統制下の作品と言われているが、かえって開放感をかんじた。今日の戦争映画は反戦平和だの恋人や家族の別れ話だけがやたら強調されていて、まるでそれしか発言してはならないかのような閉塞感に満ちている。しかし本作はストレートに戦いに臨むパイロットたちの心意気をえがいている。英雄を英雄として素直に捉えている描写はむしろ斬新で爽快感すら感じる。戦争には敵がいる。敵は欧米列強諸国である。今日の映画はその点が実に曖昧であり、いわば自然災害の映画のようであり、政治批判すらも描かれていない。その点本作は巨大な敵に立ち向かう男たちの栄光と不安と誇りに満ちた英雄譚として輝いている。俳優の雰囲気も素晴らしい。黒澤作品でおなじみの大河内伝次郎と藤田進の姿三四郎コンビをはじめ、あの独特の雰囲気は当時の人間にしか再現不可能だろう。また、ゼロ戦21型、99艦爆、97艦攻、96陸攻といった実物のマシーンはこれまた現代では再現不可能。60年前の本物が動いている映像はもはや貴重極まりない歴史資料であり、なんら恥ずべきことのない財産である。特撮場面は実写映像と交互に写しだされており、見ているうちにどこまでが本物でどこからがニセモノだか区別がつかなくなってくる。目の錯覚を利用した映像マジックに見事なまでにだまされる。なんでもかんでもCGでやれば迫力がでると勘違いしている連中は本作をみて頭をひやすべきであろう。しかし、のちのハリウッド作品から、オタクアニメにいたるまでどれほどの作品に影響を与えたのか、その先見性たるや凄まじい。いろんな映画を見たあとで本作を見たらどこかで見たことがある映像表現が目白押しだ。戦争映画という枠をこえて、いくら褒めても褒めすぎではない名作で、金字塔である。
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