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水戸黄門漫遊記 人喰い狒々 (1956)

監督
伊賀山正徳
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4.00 / 評価:1件

黄門様一行、ついに怪物と死闘!

  • kug***** さん
  • 2016年8月23日 12時35分
  • 閲覧数 351
  • 役立ち度 1
    • 総合評価
    • ★★★★★

 前回も書いたとおり80作以上ある黄門様映画のうち、東映が製作した「月形龍之介」主演の全14作は奇怪なタイトルが大半で、忠義の化猫と共に悪徳家臣を倒す「怪猫乱舞(元ネタは「鍋島猫騒動」)」、「怪力類人猿」は笛で操られる殺人ゴリラ(フランケン映画の模倣)。本作では「岩見重太郎(薄田兼相)の狒々(ひひ)退治」を元に「化物と黄門様一行が戦う」。この三作で三本立てにする映画館も当時は多く、狙って製作した連作短編で、東映の「夏休み怪奇シリーズ」の元祖と言えます。
 信州七日市にやってきた黄門様一行。町での「踊りへの強制参加」という奇妙さに話を聞けば「甲武信権現の怒りを鎮めるため」だという。しかも、白羽の矢がたった家の娘を生贄として差出さないと一家皆殺しの天罰が下ると。一行は泊っていた旅籠へと矢が立ったのを好都合と、泣く泣く娘を差し出そうとする主人に正体を明かして説き伏せ、黄門様自ら花嫁衣装で娘に化けて甲武信権現へと奉げられる。
 本来の話なら出て来た狒々に手傷を負わせますが、TVの黄門様の「百話に一回くらいある話」では、人攫いの悪党です。しかし、なんと「何も起こらず待ちぼうけ」。朝帰りの黄門様一行は挙動不審な侍とすれ違う。だが、帰って驚愕。宿は破壊され、辺りは血の海。残る巨大な手足の跡。一人を残し、皆殺しで娘もさらわれたという。偽者と疑われながらも、縁者である藩主「前田丹波守」を訪問する黄門様。聡明だが天刑(ハンセン)病を患い顔面が崩れ、婿入りしてきたものの姫の「千草」に避けられることに心までも病んだ丹波を励まし、二人の仲を取り持とうとする黄門様だが、藩が生贄を差し出すよう触れをしていることを問い正す。そして、丹波の傍らの忠臣「棚倉重四郎」は帰り道の怪しい侍だった。お蝶らに後をつけさせると棚倉は甲武信嶽の奥深くにある洞窟へと嫌がる丹波を連れて通っていた。そこは「天幻教」という怪しげな宗教の巣窟。教祖「お源」の秘薬で治ると聞くも信じられない丹波だが、忠臣の熱心な説得に従ってしまう。実はその秘薬こそ浚った娘の生き胆。お源はならず者の「熊五郎」とその手下らを従え、「太郎」と名付けた巨大な狒々を飼いならし、娘を浚わせては儀式の生贄にし、死体は太郎の餌にしていたのだ。
 黄門様の説得も姫には通じず、一向に病が癒えない丹羽は姫への怒りが爆発。姫御付の腰元を手打ちにしてしまう。丹波を慕う棚倉の妹「小枝」は姫に許すよう只管詫びるが「身も心も鬼畜」と取り合わないために自害して果てる。
 洞窟に忍び込んだお蝶らは囚われの娘たちを救い出し、黄門様は丹波と棚倉へと突きつけ、出家しろと言い渡す。疲れ果て出家を考えていた丹波は素直に従い、一切を黄門様に託して城を去る。ところが白羽の矢が城へとたち、またも黄門様が姫の身代わりをつとめるが、流石にこれは黄門様一行を誘い出す天幻教の罠。襲い来る熊五郎らならず者たちと、太郎。そして、お源と共にいる棚倉と丹波。ならず者たちを次々倒す黄門様一行だが、役人達を片っ端から引き裂き、真っ二つに圧し折り、皆殺しにしながら太郎が黄門様に迫る。黄門様の杖で何度殴られても全く応えない。助っ人に来た恪さんの空手チョップも通じない。ついに悪人たちは皆殺しになったが、狒々は倒れない。なんとか追いやり、丹波へと詰め寄る黄門様。姫への未練から丹波は「全て上手く行く」というお源の言葉を信じる棚倉に誘われやってきたものの、それは黄門様の暗殺で、お源らも金品目当てだと愕然。己を恥じて谷へ身を投げ、棚倉も後追い切腹。
 雷鳴轟く嵐の中、再び黄門様たちに襲い掛かる大狒々。黄門様の杖、恪さんのチョップ、助さんの刀を何度も受けても倒れない。危うし一行! だが、加勢に来た水戸藩の無数の矢と鉄砲が大狒々を貫き、ついに怪物も断崖絶壁を転落した。
 かくて、悪政は正され、化物も退治された七日市は活気を取りもどす。

 病気で狂気に陥る殿。冷酷な姫。巻き添えで死んでゆく忠臣たち。市井の人命を軽んじる武士。娯楽作なのに封建社会の歪さや不条理が描かれており、下手なリアル志向よりリアル。悪ではなく忠義ゆえの後味の悪さ。TVでは権力で何でも解決の黄門様が辛酸舐め続け、最後に逆転も珍しい。
 邪教や狒々の躊躇なく惨殺する冷酷さと狂気。殺陣の最中に流血はないが、死体や殺人現場は血塗れ、娘は生きたまま内臓を抜かれ、血を絞られ、食われて白骨に。狒々の怪力で殺される役人もかなり無惨で残酷です。
着ぐるみは「里見浩太郎」主演の岩見重太郎映画「怪獣邪九魔の猛襲」の使い回しの噂もありますが、前作に引き続いて製作し、演じたのは「相良三四郎(大橋史典)」。日本着ぐるみ造詣の草分けでゴジラの製作にも関わり、怪獣TVドラマ「アゴン」や「マグマ大使」の特撮と造詣。黒沢映画の常連俳優でもあります。
 前田家が藩主なのは「上州七日市藩」であり、信州七日市は藩ではありません。些細な間違いですが。

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