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痴人の愛

daw********

4.0

叶順子さん、ハマってます。

谷崎潤一郎の同名原作を映画化したものです。耽美主義の 代表作と評価されている「痴人の愛」ですが、その耽美と いうのはまさに美に耽るわけですから、身体は官能的で ありながらも精神的には退廃的な側面が色濃く描写されています。 原作は大体こんな感じです。 28歳になる独身の電気技師河合譲治は仕事は真面目だけれども 人付き合いは悪く会社では浮いた存在。恋愛経験もないのですが 彼には密かなる願望があって、それは何も知らない少女を自分の 理想とする女性に育て上げて伴侶にするということでした。 (何やら危ない匂いがしてきますが・・・) ある時、河合はカフェの女給をしていた異国風の容貌を持つ ナオミを見初めて、首尾良く一緒に暮らすようになりますが、 教育をするどころか我が儘で貞操観念もなく傍若無人な振る舞いに 終始するナオミに翻弄され次第にナオミーの意のままに動かされ、 美しきナオミの身体の奴隷と化していく姿を格調高い文体で 描いております。 この極めて現代的なテーマを持つ作品が、大正13年に発表された ことにも驚きますが、80年以上経った今でも、何の違和感も無く、 更にはこの時代でもこれほど官能的表現が許されたのかと、大正 末期の時代背景を知る上でも参考になる秀作だと思います。 で、映画カテゴリーなので映画に話を戻しますが、3度、同名の 映画化がなされています。昭和24年、35年、42年です。 河合とナオミの配役は次の通り。 昭和24年=宇野重吉、京マチ子。 昭和35年=船越英二、叶順子。 昭和42年=小沢昭一、安田(大楠)道代。 邦画が好きな人なら、名前を見ただけで作品のイメージが浮かぶのでは ないでしょうか。作品としての出来は昭和24年版が細部の演出まで しっかりとしていて一番いいのではないかと思いますが、キャストで 言うと河合は小沢昭一さん版。ナオミは叶順子さん版ではないかと。 小沢さんは今でもその博学多才ぶりでメディアにもよく姿を見せて くれますがあの通り、ちょっと、とぼけていて情けなく頼りなさそうな ところがいい味をだしていますよね。 映画では演技だとは思うのですが、ナオミの虜になっていく様を 時間的流れを非常にうまく、徐々にはまっていく姿を演じきっています。 見事としか言いようがありません。ナオミの男友達役で田村正和さんが 出演しますが、彼とナオミの関係を遠巻きに窺う様子は演技にしては 上手すぎるほどしっくりときています。 ナオミ役は叶順子さんが強く印象に残っています。 パーツそれぞれが主張を持っている顔立ちのはっきりとした女優さんでした。 妖艶な雰囲気と肉感的な魅力がナオミのイメージに溶け込んでいて 船越英二さん演じる河合を翻弄し、意のままに動かしていく様子が 無理なく伝わってきました。愛くるしささえ感じる演技で嫌らしさも なく淡々として演じていたところに好感が持てました。 叶さんは一時期、大映の看板女優になりますが、全盛時に結婚のため 引退します。現役であればどんな女優さんになっていたか、興味ある 方でした。 どの「痴人の愛」も古くささを感じることはなくて、繰り返しに なりますが現代的テーマでもある「耽美」を扱っていますので、 すんなりと作品を楽しむことが出来ると思います。

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