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忍びの者

kor********

5.0

ネタバレ成功へのからくり

元号を元亀から「天正」へと変えてしまう程の巨大な力を持ってしまった一人の武将「織田信長」であるが、邪魔は排除する合理的な極論は同時に多くの敵を生む事になる。 天台・真言宗の流れを汲む伊賀の忍者達もそれに当たり、実際に起きた「天正伊賀の乱」に置いての対決図を石川五右衛門といった現代でもイメージしやすい人物に視点を置いた点が作品をとても観やすいものにしている。 そして人間味を掘り下げるために異性に弱い一面や、束縛への反抗心など人間の内面に迫ったリアルさが重なり極上の時代劇を作り上げている。隠し扉や隠し部屋、忍者の小道具も描きつつ、終盤ではエキストラを多く配置し圧巻の戦闘シーンを描く点も壮大で宜しい。 百地丹波という伊賀忍者の祖の素性に思い切った脚色を加え、冒頭からその“からくり”を見せてしまう辺りが上手い。そして二役を声色を変え演じ切り、軽快な動きも見せつつ主演の市川雷蔵を食って掛る迫力が伊藤雄之助にはあった。 豪快さやカリスマ性のみならず、美男子としても語り継がれた信長をなんとも濃い若山富三郎が演じるのには最初は不安であったが、非道さの頂点を極めた威圧感が段々とハマリ役にも見えてしまうから凄い。主人公の因縁のライバルとして存在感を放つ西村晃の執念もまた素晴らしい。 篠田正浩監督、中井貴一主演の『梟の城』を昔一人で古びた映画館で観賞し、感動したことを思い出してしまった。忍者モノは派手なアクションに目が行きがちだが、忍者であるが故に押し殺す「人間の内面」を描くリアルさがあるとなお良いという事を再認識させてくれた一作。 ・後日談 ・互いに部下を煽り立て、てっきり自分で利益を独り占めするのかと思いきや、二つの里を切磋琢磨させ、里全体を盛り立てようとした敏腕社長ぶりも伺える百地丹波。

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