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Love Letter (1995)

監督
岩井俊二
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4.07 / 評価:1375件

やっぱり照れくさくてこの手紙は出せません

  • 風の狩人 さん
  • 2020年7月10日 10時58分
  • 閲覧数 854
  • 役立ち度 14
    • 総合評価
    • ★★★★★

1995年の岩井俊二の劇場用長編映画監督第一作目のこの作品を自分史上邦画ナンバーワンという方が多いということは知っていた。いつかは観ようと思い、一人二役の中山美穂主演のアイドル映画の疑念が晴れないままに観てみた。

渡辺博子(中山美穂)が死んだ元恋人藤井樹♂(柏原崇)に届くはずのない手紙を発端に、最後に藤井樹♂から藤井樹♀(中山美穂)への感動的な過去からのラブレターが届く感動作。中山美穂はとてもキュートだし、樹♂の母役の加賀まりこが実に良い味を出している。

渡辺博子と藤井樹♂の物語かと思ってみていると、実は藤井樹♂と藤井樹♀の初恋の物語だと気がつく転換が憎い。
大好きな作品なんだけど、幾つか気に入らない点がある。

・樹♀の叔父が儀兄の死を不謹慎に大笑いしているシーンが不快だった。
何故、あの演出になるのであろうか?あの演出の必要性が分からない。

・樹♀が熱で倒れた時のお祖父ちゃん(篠原勝之)と母(范文雀)のやり取り が、病院に辿り着く時間のことを言ってるが、時間だけでなく環境も影響するだろうが!

・博子の新恋人秋葉(豊川悦司)の軽いキャラが好きになれない。

・中山美穂の一人二役が分かり難いので髪型にもっと差異をつけるべき。

・樹♀の少女時代の酒井美紀と中山美穂の顔が違い過ぎること。この二人のそれぞれの配役と演技には全く不満はないし、むしろ称賛に値する。
でも、この作品の建付けなら、少しは面影がないとあかんと思う。
あまりにも違いすぎるので、この作品の命題でもある「樹♂にとって博子は樹♀の身代わりだったのか?」という答えは一瞬NOだと思ったけど。。。

「樹♂にとって博子は樹♀の身代わりだったのか?」の僕のラストアンサーはYESである。答えはラストの図書カード裏の絵より先にとっくに出ている。
樹♂が山で遭難し、嫌いだと言っていた松田聖子の『青い珊瑚礁』を歌って死んでいったのは、好きなものを好きと素直に言えない樹♂の性格と彼の人生の最期に脳裏に浮かんだのは『青い珊瑚礁』がヒットしていた学生時代の樹♀に対する初恋への想いだったに違いない。
その話を知った博子がプロポーズを樹♂からしてくれなかったことを思い出す。そして、図書カードに書かれていた名前は樹♂自身ではなく、樹♀のことに思えてならないという考えに至り、「この手紙はあなたが持ってるべきだ。」と今までの手紙を送り返す樹♂への想いを吹っ切るような行動に出る。
博子が雪原で「お元気ですかー?私は元気です。」というシーンは、あなたを完全に吹っ切るという意思表示に思えた。
それは博子にとって残酷に見える真実だが、実は死んだ彼をこれ以上引きずらずに新しい恋に前向きになれる良い事のような気がする。
逆に今までは父の死と樹♂を失う(今の時代と違い中学生の転校とは別の世界へ旅立ちの意味)というダブルショックで嫌な思い出として恋心を封印していた樹♀にとっては、悔恨の展開になって行くとも言えるのだ。その辺りの既に亡くなった樹♂を巡る二人の女性の彼への想いが逆転していく様がとても巧みに綴られている。

ということで、単なるアイドル映画なんかではなく、人間の恋を描いた実に深い作品だったと思う。
一番好きなシーンは最期に樹♂が樹♀に本を代わりに返却して欲しいと家を尋ねるシーン~樹♂が転校したと知って、悪戯で樹♂の机上に置かれてた花瓶を樹♀が割るシーン~樹♀が「失われた時を求めて」を返却した後、図書室のカーテンが風で大きく揺れるシーンの一連の流れ。
そして、当然、ラストシーン。これらのシーンを思い返すと、先に挙げた不満点なんて小さな物に思えてしまうな。

好きな映画です。

詳細評価

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