視覚を支配する猫
- 文字読み さん
- 2009年2月23日 13時39分
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1958年。中川信夫監督。医者の妻の転地療養のために買った田舎の屋敷は化け物屋敷と呼ばれていた。老婆の亡霊に妻が殺されかけたため、夫は付近の寺でその因縁を聞く、という話。青っぽいモノトーンの現代編とカラーの時代編。ともにスタイリッシュな映像。1時間ちょっとという短時間でこの密度。すばらしいです。
現代編では女性や犬や使用人だけが老婆の亡霊を見ていて、医者は半信半疑という意味で、男=理性、女=妄想という図式なのですが、時代編では男の家老こそが呪われるターゲット。彼にとって身近なひとがみな怨霊に見える。近代と近代以前のジェンダー配置の差がよくわかります。
猫の呪いによって視覚を支配されるのは家老だけでなく観客のわれわれでもあるってのがすごい。家老とともにわれわれにも怨霊が見えるわけだし、さらに、恋する若い二人のシーンで、一人づつカットで交替して最後に同じ画面で抱擁するというお決まりの場面。最後の画面の手前に老婆が写っています。観客にだけ見える「支配者」の姿。すばらしい!
最初に屋敷の敷地に入る時のカメラの揺れやノイズとか、閉じたつもりでもすきまがある日本家屋の構造とか、こまかいところがすばらしい映画です。ただ怖がらせるだけのホラー映画との違いをごらんあれ!
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