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生きている小平次

bakeneko

5.0

ネタバレ夜の潮騒の浜で…。

江戸時代に書かれた怪異譚の最初の映画化で、日本的な幽霊譚であると共に男女の情感の機微も明らかにして見せてくれる傑作であります。 えー、“小幡小平次”の映画版は2作とも大傑作であります(そしてどちらも上映時間が短い)。 そして、2作とも“和風幽霊譚の幽玄な情感”は共通していますが、描かれるヒロインの性格解釈の差によって、それぞれに違う三角関係の心理&真理を見せて抜群に深く面白いのであります。 本作のヒロインは八千草薫で、もちろんこの頃はとびきりに美しいのですが、内面の性格の解釈が面白く、(既婚の男性&全ての女性には思い当たる)実在感のある女性像を創り上げています(凄いですよ~)。そして、他の2人の性格&心理描写と絡んで、“普遍的な男女の関係と真理”を提示してくれるのであります。 モノクロの画面を上手く生かした映像と演出は素晴らしく、一滴の血も出ないし、凄惨な描写も皆無なのにも係らず、あるシーンはトラウマもののインパクトを与えてくれます(「回転」のあのシーンに匹敵する“怖さ”です!)。 そして、薄暗く暮れ行く屋内や夜の砂浜の“まるで世界に自分たちだけしかいない”かの様な寂寥感が幽玄な感覚と解け合った不思議な観念世界を見事に創り出すことに成功しています。 “生きている小平次”は新旧2作どちらも必見ですが、本作の方がストレートな作風となっています。全年齢的にお薦めですし、多分お子様でも大丈夫でありますが、意味するものの真の深さは既婚者になってから痛い程分かって来ます…。

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