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怪談累が渕 (1957)

監督
中川信夫
  • みたいムービー 1
  • みたログ 14

3.57 / 評価:7件

日本の夏には怪談映画

  • cyborg_she_loves_me さん
  • 2020年7月9日 14時53分
  • 閲覧数 166
  • 役立ち度 1
    • 総合評価
    • ★★★★★

中川信夫監督の、というより、この時代の日本の怪談映画は総じてですが、やっぱりいいですね。作品全体に気品がある。
 そういう格調高い映像とともに描かれるから、これは、ただ単に「ぎゃー」と叫んで逃げ出したくなるような種類の「怖い」物語じゃなくて、別に取り乱したりはしないんだけど映画館から出てきたらなんか現実が今までとちがった色に見えるっていうか、なんか体の中のどこかにうすら寒さが後々まで残るっていうか、そういう「不気味な」感覚の映画です。

 こういう映画、ほんとに最近なくなりましたね。
 ただ単にグロテスクな映像で目先の感覚ばかり刺激されることを求めて、本物の不気味さを知らない観客が増えたのでしょう。
 この時代の日本の怪談映画は、ここ以外の世界のどの国のどの時代にもない独自の世界をもっていると思います。

 この映画にも幽霊は出てくることはきますが、この映画で本当に怖いのは幽霊そのものじゃありませんね。
 このお累(若杉嘉津子さん)の怨念が、怖いです。「私を捨てないでおくれ、どこへも行かないでおくれ」といって新吉ににじり寄ってくるシーンなんか、まだお累さんは生きてるわけですけど、怖いです。
 怨念の固まりになった女っていうのは、そんじょそこらの幽霊よりよっぽど怖いですねー笑。
 醜いから、グロテスクだから怖いんじゃない。上述のシーンではお累は醜く変形した顔の左半分は隠しています。だからこそ怖い。美人だからこそ怖い。そういう怖さです。

 それから、このラストの悲劇は、親の因果が子に報いたことの結末なわけです。新吉自身は善良で気のいい男なのに、親が犯した罪に対する怨念がずっと続いているせいであんな無残なことになるというのは、じっくり考えてみればこんなに怖いことはないです。だって、自分の力でこの怨念を回避する手立てがないんだから。
 こういう因縁話っていうのも、日本人独特のジャンルですね。すべてにおいて自己責任主義の欧米人には、ナンセンスに感じられるだけで、ちっとも怖いとは感じられないでしょう。

 腕や首が飛んだり血がドバドバ出たりする映画を何度も見たいとは思いませんが、この映画は夏になるたびにまた見たくなる大好きな映画です。

詳細評価

物語
配役
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映像
音楽

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