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怪異談 生きてゐる小平次

bakeneko

5.0

ネタバレ日本的なるもの

奇譚の中に“日本的情感”を凝縮した“幽玄の和風情緒溢れる幻想物語”であります。 えー、西洋の怪談&ホラー映画は、兎角騒々しくて凶暴なモンスターや悪霊が出てきて“戦闘力の強大さ”を売りにしているところが多い傾向にあります。その一方で和風の怪談は、幽玄的な風情と情感を“優しい哀しさ”として静やかに語るものに傑作が多いような気がします。 中川信夫は、喜劇や人情話など多くのジャンルの作品を撮っていて“決して怪談だけの専門家”ではないのですが、大傑作「東海道四谷怪談」、怪作「地獄」などの印象が強いせいか、怪談の巨匠扱いされています(そういえば、TV映画「牡丹灯籠」にも心底驚かされたなあ!)。 そして遺作にあたる本作では、古典(怪異譚)に材を採った鈴木泉三郎の新歌舞伎を映画化しながらも、寧ろ“日本的情感”を凝縮することに腐心しています。 雅楽の御囃子の音楽の素晴らしい情緒や、幻想的なまでに美しい和風空間(和室、庭、森林や街道、夕日の紅さの懐かしいこと!)、そして日本女性の美を具現化したかの様に“匂うがごとく輝いている”宮下順子の存在感に感動させられて“この感覚が理解出来る日本人で良かった”と心底思わせる傑作であります。 とても美しい映画で日本人のDNAに直に訴えてくる情緒的作品でもあります。 たった3人の役者で驚くほど短期間で撮り上げた遺作がこんな大傑作なんて格好いいなあ!

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