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日本海大海戦 海ゆかば (1983)

監督
舛田利雄
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2.78 / 評価:41件

下士官兵1人1人が主人公

  • mik***** さん
  • 2017年4月23日 7時49分
  • 閲覧数 1200
  • 役立ち度 1
    • 総合評価
    • ★★★★★

私が最も愛してやまない戦争映画。

あらすじとして、舞台は三笠投錨の舞鶴軍港。
京都の海を背にした軍楽兵たちの華やかな演奏から始まる。

 軍艦が帆を休める港を颯爽と歩く主人公は、沖田浩之演じる軍楽兵、神田源太郎。

彼には女郎の恋人、おせつ(三原順子)があり、婚約の約束をしたまま三笠へと搭乗する。

同じく軍楽兵には、同期の尾形(宅間神)新兵の島田(坂井徹)がおり、上陸中に同じく三笠搭乗員が自殺した際には、火葬曲を神田ら三人と演奏する重要な戦友だ。

他には私的制裁をくわえ、階級のあがらないじゃくりの大上兵曹(佐藤浩市)の演技が良い味を出していた。

 守銭奴の大上は、上陸せず男と契るのが趣味で、島田の可愛い顔を見ると、御稚児さんにしようともくろんだりする。
そこで機関兵のガッツ石松と島田をめぐって殴り合うのも見所だ。
 海軍における男色行為が描写されているのもこの作品だけだろう。

さらに二百三高知では児玉源太郎を演じた丹波哲郎が山本権兵衛であり、
軍楽隊の将校には伊東四朗などの大物俳優も登場する。
申し分ないほど豪華なキャストが本作を演じているのが「日本海大海戦」だ。 

しかし、本作の惜しい点を挙げるとすれば、
予算切れのため、最も大事な戦闘シーンが砲兵科の大上兵曹、軍楽兵の沖田のみで戦っている様にしか見えず、三笠の死傷者が圧倒的に多く見える事だ。
肝心のロシア率いるバルチック艦隊や、ロシア兵士の姿が劇中に一切現れない。
これでは緊迫感や迫力に欠けるのも頷ける。

 実際の日本大海戦は、日本戦史唯一の圧勝との記述が残されているのである。
( 敵国ロシアのバルチック艦隊の艦船の損害は沈没21隻。戦死4,830名。
対して連合艦隊は戦死117名、水雷艇3隻のみの損害であった。有名な東郷ターン、V字戦法によるおとり戦法、帝国海軍の巡洋艦がロシアを上回るスピードを持っていた事が有名な勝因として挙げられる)

 だが、本作は下手な反戦プロパガンダ映画より、戦争映画として評価に値するのではないだろうか?

下士官兵達のリアルな陰湿な就寝後のいじめ、おせつと神田の痴話喧嘩。
そしてバルチック艦隊との戦の前には、甲板の軍楽兵たちの美しい楽曲で、三笠の兵士達は故郷の景色を思い出し、つかの間の休息に浸る。

 演奏後には居住区内のラッタルで、大神兵曹が執拗に嫌っていた主人公神田の前で、口減らしで徴兵されたと語り、涙を見せた。

「おらは死にたくない。畑耕してえよ」
と泣き叫ぶ大上に、

「死ぬときはみんな一緒じゃけえ」
と、神田が背中をさする場面には、思わず涙した。

 かの名作二百三高知を手がけた、海ゆかば監督、舛田 利雄の作品テーマとして感じるのは

「名も無き兵士たちのドラマ」だ。

港に碇を降ろせば置屋に駆け込む古参兵。
あるいは生死を恐れ、葛藤し、生きようと戦う新兵の姿を如実に描いた本作は、個性豊かに主要人物たちを描いていると私は想う。

やはり昨今の新鋭俳優ら主演の映画と見比べると、昭和映画こそが、名も無き兵士の戦争を具現化しているのではないかと感じるのである。

例えば「永遠のゼロ」「フォックスと呼ばれた男」。スペシャルドラマ「妻と飛んだ特攻兵」など。
 無闇にCG を使用した薄っぺらい戦闘シーンの演出。また、朝ドラの戦後物語の不自然な演技が目に付くのは私だけだろうか?
 せめてジオラマ模型のゼロ戦の空戦の方が、いくらか現実味があると思うのだが…。

さらにSMAP中居主演の「私は貝になりたい」のリメイクに至っては、CG 臭い山岳しか記憶に残らない。
監督は日本の風景にこだわったと言う話もあるのだが、
 大空襲で焼けた東京の焼け野原を映し出すことが真の反戦映画ではないのか?

 私が邦画の衰退化を憶えるのは、このようなお涙頂戴の、「戦争を知らない人間の作った仮想日本史」を、感動ドキュメンタリーとして放映するのが疑問だからである。

俳優、女優のブランド名で興行収入を得る事のみに特化した創作映画は、果たして英霊たちの生き様を再現することになるのか?

結論として、本作海ゆかばの評価が低いのは、戦闘描写の不足、沖田と三原のラブシーンで尺が潰れている事。

ひいては最大の要因として、金八先生のドラマに出演していた沖田。三原をあえて主演にしたのも、当時の観客からトレンディ臭い!と、反発を喰らったのが原因だろう。

だが、昭和俳優のやけに男くさい演技。
沖田がこれほどイケメンとは、始めて知った。

そして1人の海軍軍人として演じきった沖田浩之の2枚目のカッコいい素顔にこそ、私は心から魅力を感じる。

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