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アタラント号 (1934)

L'ATALANTE

監督
ジャン・ヴィゴ
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4.24 / 評価:17件

早世の天才、ジャン・ヴィゴの遺作

  • 一人旅 さん
  • 2018年11月20日 23時45分
  • 閲覧数 695
  • 役立ち度 4
    • 総合評価
    • ★★★★★

ジャン・ヴィゴ監督作。

船乗りの男と彼と結婚したばかりの女の心のすれ違いと愛情を描いたドラマ。

敗血症により29歳の若さでこの世を去った天才、ジャン・ヴィゴの遺作にして唯一の長編劇映画で、病状が急激に悪化する中ベッドの上から編集の指示を出して死に物狂いで完成させた渾身の名編であります。本作を含め生涯でたったの4本しか作品を発表できなかったジャン・ヴィゴですが、彼の代表作である『アタラント号』は紛れもなく映画史上に残るフランス映画の傑作として知られています。

ル・アーヴルと田舎町を結ぶ商船「アタラント号」の雇われ船長である夫:ジャンとその妻:ジュリエットを主人公にして、単調な船上生活に辟易してしまった妻が夫の許可を得ずに一人で憧れのパリの街に繰り出してしまったことから、怒りを覚えた夫は妻を陸に残したまま船を出発させてしまう…というお話で、シンプルな作劇ながら“失って初めて気づく大切な存在”をユーモラスに心温かく描き出しています。

船上という窮屈な不自由と、華やかな広がりに満ちたパリという外部の魅惑的世界。妻は一時的な自由と解放を求めてパリの街を一人彷徨いますが、それすら許さない夫は怒りの感情に身を任せて新婚の妻をパリに残して出航してしまいます。しかし直後には、妻がいなくなったことで文字通りもぬけの殻と化した夫の姿がひたすらに映し出される。“親爺”と呼ばれる猫好きな酔っ払い船員とボードゲームをしてみても、心ここにあらずで思考力が完全に喪失しています。ついには、愛しい妻の面影を求めて河の中にダイブしてしまう始末。妻がパリで恐い目に遭いながら孤独に彷徨っているのと同じように、窮屈な船内でも夫は妻を求めて心を孤独に彷徨わせているのです。地理的には二人は全く異なる場所にいながら、結婚して初めて離れ離れになったことでお互いに相手の存在の大きさを以前よりも強く痛感していきます。船が命の夫もパリの街に強い憧れを抱く妻も、お互いに“一緒にいる”ことが幸せの前提条件であったことを、図らずも物理的に距離を置いたことで初めて悟っていくのです。夫婦の愛情を再確認する結末がとても心温まりますし、モーリス・ジョーベールのロマンティシズム溢れる旋律も効果的であります。

そして、見逃せないのが“親爺”ことミシェル・シモンの怪演。本作より2年前に主演したジャン・ルノワール監督『素晴らしき放浪者』(1932)の延長線上のような、不格好な風貌と挙動不審な芝居で始終異彩を放っています(最後の最後に“いい仕事”してくれるのが心憎い)。

詳細評価

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