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CURE キュア (1997)

監督
黒沢清
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3.65 / 評価:442件

あんた、一体誰だ?

隠喩的とも見まがうような黒沢的な廃墟。いったいここは日本のどこなのか?

思えば「ドレミファ娘の血は騒ぐ」から最新作「散歩する侵略者」まで黒沢清の作品にはどれだけの多くの廃墟が登場してきた事か。
しかもそこらの空き家レベルではない、どの角度からでもロングショットな廃屋が。

得意のホラーならまだしもコメディ色の強い「勝手にしやがれ!!」シリーズにしてもホームドラマの「ニンゲン合格」「トウキョウソナタ」にしてもあっちゃんが縦横無尽に活躍する「セブンスコード」や「岸辺の旅」のようなロードムービーでさえどこかそのイメージがつきまといます。

しかもそのイメージは肝心な瞬間にぬっと姿を見せ観ている私たちを限りなく惑わせます。

ここは日本のどこなのか?

物語自体はどうやら催眠術によって殺人を教唆する萩原聖人を追う刑事 役所広司という極めてシンプルな図式の筈なのにいつの間にか樹海に迷い込まされるような錯覚。

うじきつよし演じる教授が「結局誰にも分からんてことさ」というセリフにあるように役所広司はいつの間にか本来の目的も自分自身の厚みさえ欠けてしまったかのようなぶっきらぼうな行動体系に私たちを連れて吞みこまれることになります。

文字通り萩原聖人に「あんた、いったい誰だ?」と問われているように。

行き着く先は完成とも崩壊とも一切無縁の、そもそもなぜこんな廃墟があるのかという「意味」さえからも遠ざかった空間。

もはや自分が刑事であることなど忘れているに違いない役所広司が萩原聖人に一発ズドン!と放った瞬間、ホラー映画でありながら押しつけがましい「痛み」を回避しているにもかかわらず背筋が凍るような黒沢独自の暴力性を上映中に観せ続けられていたことに初めて気づくのです。

私たちが「セブン」や「ドラゴンタトゥーの女」「ゴーンガール」などのデビッド・フィンチャーを「退屈させない程度の作家」としか感じないのは明らかにわが国に黒沢清がいるのを知っているからに他なりません。

あの地面を引きずるような黒く長いコートが似合うのはモーガン・フリーマンでもブラッド・ピットでもなく役所広司だけです。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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