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獄門島

獄門島

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sks********

4.0

ネタバレ原作と対比してみました。

獄門島は原作が日本を代表するミステリーとして評価されているのになぜ映画の評判が今一つ芳しくないのか、今更ながら改めて観てみた。 犯人の変更については、DVDの特典にある脚本家のコメントで触れられていたが、この映画が犬神家の一族、悪魔の手鞠唄と、女性を犯人にしてヒットを飛ばしてきたことの延長線にあることが理由として挙げられている。公開時には犯人当てというイベントも派手に行われていた。 興行面ではやむを得なかったのは理解できるが、やはり映画の出来とすれば犯人の変更が残念な結果に陥ってしまったと言わざるを得ない。 何故か?それは獄門島でしばし言われる動機の薄さを更に助長してしまっているためである。 なぜあのような犯行をせざるを得なかったのか?その土壌として原作では、太閤さまと言われていた嘉右衛門の力の大きさ、都会の資本家と労働者に相当する網元の力の大きさが繰り返し述べられており、和尚、村長、幸庵については、村の三長老、本鬼頭の三奉行と位置付け、村が本鬼頭とこの三人で運営されていることを強く印象付けている。しかし映画ではそこがうまく表現できていない。 勝野に関するエピソードは原作にはない創作であるが、それが加わることによって事件の結末が陳腐なものになってしまっている。 内容的にも細かい点を突つくつもりはないが、例えば和尚がリウマチで手が悪く人を絞め殺すことは不可能と言っておきながら、テコの原理を利用したとは言え、竹蔵が汗だくでやっと持ち上げることができた吊り鐘をリウマチ持ちの和尚が持ち上げられるのはおかしい。 また、吊り鐘をわざわざ二重にして隠した意味も説明されていない。 金田一の部屋に和尚がなぜわざわざ俳句のある屏風を置いたのか?そこも触れていない。 さらにこれを言ってしまうとおしまいかもしれないが、三日続けて殺人事件が起き、その翌日には金田一耕助が全てのなぞを解き明かしているのだが、いつものこととは言え、あまりにも推理力というか、想像力がたくまし過ぎである。 島から離れる時に、5日分の宿泊費を払っていることからわかるが、金田一耕助が獄門島に滞在したのはわずか5日間である。 事件があっという間に解決するという点は原作も同じ。派手な見立て殺人の割にはあまりにも呆気なく結末を迎える。 つまりこの話は、推理や犯人当てを楽しむものではないと言え、そこが映画にしても難しい所。 スピード解決する話なので、金田一と磯川警部とのやり取りも、ギクシャクしたまま終わってしまう。原作では本陣殺人事件以来戦争を挟んで感動の再会ということになっているのだが。 厳しいことばかり書いてしまったが、勝野に関するエピソード以外はほぼ原作を尊重しており、市川崑監督と石坂浩二を初めとする俳優、女優陣はさすがの存在感、演技を見せている。軽快な音楽もいい。 変に犯人を変えて欲しくなかったとつくづく思える作品だった。 長文失礼しました。

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