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3-4X10月 (1990)

監督
北野武
  • みたいムービー 80
  • みたログ 963

3.80 / 評価:306件

歴史のいたずら

  • mac******** さん
  • 2007年12月29日 3時58分
  • 役立ち度 23
    • 総合評価
    • ★★★★★

  柳ユーレイさん演じる主人公は、自分からは何もしない青年です。
いや、やるのですが、どこかがおかしい。
 自分から手を上げた草野球の代打では、あっさり三振。試合後「素振りすればうまくなるよ」と言われれば、やめろと言われるまでフルスイングし続けます。
 ガソリンスタンドでの仕事ぶりも、弱いのに客のヤクザに強く出たりと、よくわからない。
 佇まいが静かなだけに、よけいに不気味で。「信じられない、普段は真面目な人でしたよ」と近所の人にコメントされる犯罪者ってこんな感じでしょうか。

 そんな彼の日常が、ある日クルッと回転し始めます。これも友人に「誘ってみたら?」と言われナンパした、石田ゆり子さん演じるヒロインとの出会いを境に。
 だんだんと、世界が歪んで行くような。
 「そうそれは、見た目はどこがおかしいのか分からないんだけど、四角の四隅を合わせたら360度以上あるっていう感覚さ」(byスティーヴン・キング)


 『その男、凶暴につき』でデビューした北野武さんの監督2作目。今作がデビュー作の、柳ユーレイさんの俳優としてのスタンド能力を引き出した、という点もすごく。2作目にこれを作った武さんのすさまじさったら。何回も観れる耐久度がずば抜けていて、こわさは監督作の中でもとびきりです。
 


 ラストは一見「それをやっちゃあ」的な終わりですが、ストーリーの流れから言えば「物語を無理矢理終らせるための」ものではないと思うので、個人的には不満も無く。

 それよりも、もうどこかで誰かが指摘されてる方がいるかもしれませんが、この最後、『ウィズダム 夢のかけら』(1986)とのラストとシンクロしています。

『ウィズダム』は俳優エミリオ・エステヴェスの主演で監督デビュー作で、当時の恋人デミー・ムーアが共演。内容は、現代版『俺たちに明日はない』、というよりむしろ、エミリオの父・マーティン・シーン主演の傑作『地獄の逃避行』(1973)への明らかなリスペクト作。

『地獄の逃避行』はテレンス・マリック監督のデビュー作で、『トゥルー・ロマンス』(1993)にもかなり影響を与えたロードムービー。

 これらの作品にはすべて、
ブルーカラー的な、社会的にうだつのあがらない仕事についている青年が…
ヒロインといっしょに…
法を犯しながら…
旅をして行く…
という共通点があります。

…で、何を言いたいかというとですね、この『3-4X10月』のラストは、あの終わりだからこそ、
(『俺たちに明日はない』→)『地獄の逃避行』→『ウィズダム→』『3-4X10月』→『トゥルー・ロマンス』という流れがバシッ、と繋がって、意味あるシーン、だと思うのです。

 北野監督がそこまで意図したのかは分かりませんが。多分全くしていないんでしょうけれど。とてもいい偶然です。歴史のいたずらとでも言うんでしょうか。


 



  

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 絶望的
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