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病院坂の首縊りの家

やまねこ_ぶっち

5.0

さらば石坂金田一......でも後で帰ってくる

日本映画史に一時代を築いた金田一探偵モノの本家・石坂浩二主演シリーズの最終作。監督は市川崑 。 シリーズ開始時は “ 角川映画 ” との触れ込みだったが、この映画のポスターには「企画 角川春樹事務所」とあるだけだ。製作から手を引いたということか。 オープニングのタイトルバックもいままでと違う。どうせなら、最後なんだから、いや最後だからこそ雛形どおりにバッチリと決めて欲しかった。 話の中身は例によって複雑に入り組んだ血縁がもたらす愛憎劇。しかし最後だからか、より複雑性を増す。レビュー欄には人間関係が複雑すぎるという声が多い。私もそう思う。録画したものをテレビで観たから、止めながら、戻しながら、家系図を作りながら観た。ほかにもそうした人が何人もいるようだ。作品そのものは映画館で観るのにふさわしい画面づくりであるようだし、公開時は私も映画館で観た。 また、レビュアーの一人が指摘しているが、横溝正史がブームになって書かれた原作だから、映画化を前提としているらしい。であるならば、横溝正史らしさをより意識し、より強調した、つまり登場人物の血縁関係がいっそう絡み合った作品ということだ。それでも元ネタは、はるか昔に緒についているわけで、原作者にすれば完結させたかった作品なのだろう。原作を読んでみたくなった。 哀しい運命〈さだめ〉としか言いようのない物語。ただ、あおい輝彦はなぜ死ぬのか、とか、由香利が死んだ替わりを小雪がよく引き受けたな、とか、女が一瞬押したぐらいで男がバルコニーから落ちるだろうか、とか、男が突き飛ばして女が後ろ頭を打ったら一発で死ぬものだろうか、とか、ギターで頭を殴ったら女でも男を一撃で殺せるのだろうか。ローマの休日では死ななかったが、とかいった疑問点もいくつかあるが、いや、いくらでもあるが、そのへんのところは、桜田淳子の美しさと安定した演技が打ち消してくれる。ほんとに、なんでこの人は変な宗教なんかに走ってしまったんだろう。寂しかったんだろうか。日本を代表する女優になれる可能性があったのに、その点も合わせて哀しい映画だーーなどと余計なことまで考えてさせてくれる作品だ。 点数は星3つかな、と思ったけれど、お馴染みさんも勢揃いして懐かしいし、みんな芝居上手だし、女優陣は綺麗だし、てことで、甘すぎると思いながら5つ付けました。電話をかけあうシーンも良かったしね。 ただね、このシリーズは音楽が映画を支える大きな柱なんだけど、この作品はどんな音楽だったか思い出せない。ネットでサントラを拾って聴いても、映画のシーンが浮かんでこない。そこが何とも残穢。 最後にもう一つ。犯人を書けばネタバレになるみたいだけど、犯人役なんて隠しネタじゃないですよ。出演者を見たら誰が犯人役かなんて一目瞭然じゃないですか。そんなものはネタバレじゃない。ほんとのネタバレは、映画のストーリーにあるんであって、金田一さんが最後に謎解きをしてみせる、その謎、つまり犯人がなぜ人を殺(あや)めなければならなかったかという元々の原因を明らかにする、すなわち粗筋を詳細に書くことこそがネタバレであると、強く言いたいですね。犯人役の俳優名なんてここで書いても何の差し障りもありません。レビュアーの皆さん、安心して犯人の名前を書きましょう。

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