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拝啓天皇陛下様

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5.0

特殊な環境下での普通の男たちの人生讃歌

昭和6年、岡山の陸軍歩兵第10連隊に棟本博(長門裕之)が入隊するところから物語が始まる。 棟本と同期入隊で、身寄りがなく、前科持ちで、字も読めないダメ男山田を渥美清が熱演している。 不器用な山田は先輩兵から目をつけられるが、同期の友情、中隊長の温情、後輩の親切のおかげで軍隊生活に馴染んでいく。 馴染みすぎて、満期を迎えても娑婆に戻りたくないとダダをこねるほどにw うまい飯が食え、いい仲間にも恵まれ、軍隊は山田にとって至極居心地のいいものとなっていた。 しかし日中戦争が勃発、棟本も山田も中国の前線に送られていく。 棟本と山田の腐れ縁とも言える関係を軸に、本作は戦前、戦中、戦後の陸軍のリアルな兵隊生活を描いている。 戦争を生き延びた2人にはさらに厳しい戦後生活が待っている。 初年兵と二年兵の関係など、旧軍の連隊生活をユーモアを交えリアルに描いている点で興味深い。 原作者の棟田博の他の著作も実体験に基づいており、同じように面白い。 これは反戦映画でもなく、軍国主義賛美映画でもない。 アメリカ映画のような英雄も出てこない。 普通の男たちが特殊な環境で生きることを強いられ、人生を翻弄されながらも助け合って生き抜いていく人生讃歌と思う。 この映画には、貧しく、不潔で、純朴で、不器用で、短絡的で、人情味があり、生きるのに必死だった日本人の姿が残されている。 豊かになって失われてしまった、我々日本人のかつての姿を垣間見ることができる。 当時35歳の渥美清、29歳の長門裕之、37歳の桂小金治らの名演、33歳の左幸子の美しい笑顔も素敵。

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