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ゴースト・ドッグ

ゴースト・ドッグ

GHOST DOG: THE WAY OF THE SAMURAI

116

god********

3.0

ネタバレ古き日本に想いを馳せる男

俯瞰ショットで捉えられた夜の街並み。 静けさの中で、妖しく煌く世界。 そこに流れてくるポップなBGM。 本作はどこか詩的で、寂しさを孕んでいる。 そんな世界の中で生きるフォレスト・ウィテカーの孤独の影を伴った佇まいに酔う。 凶暴性を内に秘めているように見えて、それでいて清らかで穏やか。 身体の俊敏性はないが、それでいて立ち回りの鮮やかさはある。 ウィテカーをただ眺めているだけで、本作の魅力は十二分に感じられる。 もちろん、ジャームッシュが貫いてきた“ディス・コミュニケーション”や“オフ・ビートな笑い”も至るところに散りばめられている。 やはりそれは、奇妙な登場人物に依るところが大きい。 どこかズレているマフィアの爺さん方、フランス語しか話せないアイスクリーム屋、スペイン語しか話せない屋上の住人。 言語が異なっても、互いに必死になって相手に自分の言っていることを伝えようとする素振りはみられない。 だが、そんなことをしなくても相手には不思議と伝わっている。 それを“以心伝心”と簡単に片付けてしまうのはどうかと思うが、そこにも本作の魅力である“不可思議さ”を感じられる。 不条理で不可思議さに満ち溢れた世の中。 何を信じ、何を頼って良いのか分からない現代。 そこで主人公は“武士道”に従って生きようとしているのではないか。 だから、武士道を忠実に描写しているかなどという問題は、この際気にするべきことではない。 主に忠義を尽くし、御恩を奉公で返し、自分だけの静謐な世界で生きる男。 全くぶれない芯の強さ。 その佇まいが奇妙な世界観の中で、異質な輝きを放っているのである。

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