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アッシャー家の末裔

アッシャー家の末裔

LA CHUTTE DE LA MAISON USHER

48

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4.0

ネタバレブニュエルも参加したホラー映画

60分版を鑑賞。 ジャン・エプスタン(ジャン・エプスタイン)監督、ルイス・ブニュエルも参加したホラー映画。ブニュエルが同監督の助監督を務めるのは「モープラ(Mauprat)」以来。 悪夢めいたイメージが多様されながらも、エドガー・アラン・ポーの原作に忠実な展開となっている。 不気味な木々、落ち葉が敷き詰められ湿っている不安定な足場、そこを荷物を持って歩いてくる男。 男は家らしきところを見つけるとドアを開け、住人に手紙を見せて「アッシャー家」を尋ねる。  「アッシャー」の名前を聞いて男たちは驚き、窓から馬車を覗く女も微妙な表情を見せる。 湿地を駆ける馬車、一方のアッシャー家。広い居間、椅子を挟んで見つめ合う男女、男は絵の具のプレートを取ると絵を一心不乱に描きはじめる。 愛した筈の妹への愛は絵に移ってしまったらしい。絵の中の精気に満ちた彼女、現実の今にも倒れそうな彼女。 馬車の行く手を阻むように立ち込める霧、霧が晴れるシーンは後に黒澤明が「蜘蛛巣城」でオマージュを捧げていた。 室内に流れる風、ワイングラス、女の肖像画、室内でコートを厚くはおる人々。寒いならなぜ窓を閉めないのだろうか。 風で燃え盛る蝋燭の火、本棚から落ちる本、舞い散る絵や木の葉、ゴミ。 響き渡るであろうギターの音色。海、霧がかった森の映像が交互に重ねられる。この霧や海、雲のイメージは幾度も繰り返し現れる。 屋敷の不気味なオブジェたち。甲冑の鎧、古時計、地べたを歩く猫、壁に描かれた別の女の顔。   男は憑り付かれたように絵を見つめ描き続ける。女はモデルとして同じ場所に束縛され、夥しい蝋燭の熱にうなされる。女は徐々に衰弱していく。女を襲う「めまい」。 疲れ果て椅子に座り込む女、男は立ってくれと懇願するように両手の手を掴む。女の顔を見て休ませようとか、そんな考えは毛頭ないのだろう。 無理な作業を続行させられ、とうとう両の手をひろげて倒れこむ妹、そこに居合わせてしまった来客。 いつまでも眼を見開いて見つめ続ける絵の中の妹、後ずさりをして脚にあたる倒れた現実の妹。絶望に満ちた表情で抱きかかえる。殺してしまった事への罪悪感か、あるいわモデルを失ってしまったショックか。 ベッドに横たわり沈黙する者、階段を降りた先で白い棺を抱える男たち、不気味なオブジェが並ぶ地下。 ゆっくりゆっくりと階段を上っていく、医者にすがりつき死を受け入れられない様子。「まだ彼女は死んでいない!!」とでも言いたげ。いや、男は女が再び自分の目の前に現れると信じきっているらしい。終始キラキラした眼をしているのはそのためなのだろうか。神経症の影響だけではないのだろう。 白いベールの彼女、黒衣をまとう絵の中の彼女。棺から溢れ出るベール。棺の釘を打とうとするハンマーを見て飛びかかろうとする男の狂気。「私の妹を閉じ込めるきか?」とでも言いたげな。 蝋燭が高い木のようにそびえる幻、棺を運ぶ男たちの黒い影がそこをゆっくりゆっくりと進んでいく。  死者を乗せる船、ベールは森の風になびき水面になびく、収められるベール、うらめしそうに葬儀屋たちを見つめる男の顔、棺桶に釘を打ちつけるショットを何度も繰り返す。  岩場の蛙の親子?夫婦?と現れ始める白い“幻”。 打ち捨てられたギター、弾ける弦、時計の振り子や歯車、不気味に揺れ続けるカーテンと光、光、光。暗闇を彷徨いはじめる男、それを見守る男。男は彷徨いそうになる男を落ち着かせようと朗読を始める。  風と共に迫りくる「何か」、白い幻、ひとりでに開く扉、闇の向こうに落ちる雷。雷はやがて館の木も焼き尽くす。 ひとりでに動きはじめる棺、手を組んで祈るように何かを待つ表情。待っていた者が来たのか、今までに見せた事のないような無邪気な笑顔を見せる。 炎のようになびく白いベール、扉の影から徐々に現れる白い幻想。ゆっくりゆっくりと近づいてくる。風によって吹き飛ばされる本、倒される甲冑。 気がつけば巨大な火が部屋を包み込もうとしていた。目の前に現れる白い幻、屋敷を包んでいく炎。絵の中の“幻”も燃え尽きる。  原作の世にも恐ろしい凄惨な結末とは大分違うが、これはこれで脱出した二人がまた絵のモデルと書き手になる狂気の作業を繰り返すのかと思うと怖くなる。

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