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残酷ドラゴン 血斗竜門の宿

残酷ドラゴン 血斗竜門の宿

龍門客棧/DRAGON INN

111

xi_********

4.0

ご宿泊なら、龍門客棧

『龍門客棧(邦題:残酷ドラゴン・血斗!竜門の宿)』は、67年製作の、胡金銓(キン・フー)の監督第三作にして、彼の最高傑作と評されることも多い、武侠活劇。まあ、実際に最高かどうかはさて置き、胡金銓の大ファンを自認する私としても、この映画がお気に入りであることは間違いありません。 当時、何故か北海道だけは限定公開されたそうですが(羨ましい!!)、如何な猛者揃いの香港映画ファンとは言え、本作を観たことのある人ってのは、あまりいないんじゃないでしょうか? と言うか、それ以前に、本作の存在を知ってる方がどれだけいるのでしょう。 恐らく、本作の存在を知らぬまま、92年にツイ・ハークが(無断で)リメイクした『ドラゴン・イン』をご覧になってる方も、結構いるのでは? 本作の物語も、胡金銓の武侠映画ファンにはお馴染みですが、明代が舞台となります。 東廠(明代の諜報機関)を牛耳る宦官(白鷹)は、政敵である長官を処刑。その遺児(徐楓)を僻地へ流刑と処す。しかし、宦官の狙いは人目につかぬ僻地で遺児を処刑し、後顧の憂いを断つことにあった。だが、二人組の剣客(上官霊鳳、葭漢)が現れ、計画は失敗。一方、東廠一派(韓英傑)は、僻地の宿場・龍門客棧に潜み、再度、殺害の機会を狙う。そこに謎の男(石雋)がブラリと現れ、ほどなく、遺児を保護した剣客たちも姿を見せる。誰が味方で、誰が敵なのか。それぞれの思惑渦巻く龍門客棧を舞台に、三つ巴の駆け引きが始まった・・・。 どうでしょう? この粗筋だけでも、相当に面白い展開を期待してしまいませんか。 胡金銓は、その期待を裏切らない演出を手掛けてくれています。 そもそも、胡金銓は、「武侠映画の神様」、或いは「香港のクロサワ」と称されていたほどの、中華圏きっての巨匠。別に、その評価を鵜呑みにしてるから言うわけじゃないんですが、本作に限らずとも彼の映画を観れば、そう評されていたのが納得出来ると思います。計算された演出の素晴らしさにかけては、間違いなく、60~70年代の中華圏では唯一無二の存在だった人です(過去形なのは、既に故人だから)。 「静(ドラマ)」と「動(アクション)」の使い分け。 「客棧(宿場)」の造形を意識した、立体的構図の利用。 「一対一」、「一対多」、「多対多」と言う、豊富な剣戟のシチュエーション。 何より、これら全てを卓越したモンタージュ(編集)で見せる、綿密に計算されたその演出。 風格、と言う誉め言葉はあまり好きじゃないですが、それ以外にどう言い表せば良いのか。 (中華圏監督にはあり得ない)「完璧主義」と言われた、胡金銓独自の映像美学に溢れつつ、策謀劇、密室劇の横顔で物語の溜めを作り、終盤は怒涛の剣戟シーンを畳み掛ける、娯楽性にも溢れた活劇。 そりゃあ、これを王道(ベタ)と言ってしまうことも出来るでしょうが、そもそも、この映画(と、その他数本の映画)が武侠映画の羅針盤となったわけで、逆に言うなら、そんなベタな物語を、これだけの風格をもって描ける辺り、やはり、胡金銓は只者じゃありません。 冒頭述べましたが、私は、胡金銓の大ファンです。 贔屓目であることは、否定出来ません。 但し! 客観的に観ようが、贔屓目で観ようが。 「面白い映画は面白い」 そう感じる映画なんてそうはないし、そう思った映画は、それが結論なんです。 古臭いことは百も承知ですが、もしもあなたが武侠映画好きなら、『龍門客棧』は必見です。

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