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三文オペラ (1930)

DIE DREIGROSCHENOPER

監督
G・W・パブスト
  • みたいムービー 2
  • みたログ 21

3.50 / 評価:6件

衣食足りて礼節を知る?

  • bakeneko さん
  • 2010年7月15日 16時12分
  • 閲覧数 221
  • 役立ち度 7
    • 総合評価
    • ★★★★★

20世紀演劇界の偉人、ベルトルト・ブレヒトが、18世紀の英国の詩人で劇作家のジョン・ゲイの『ベガーズ・オペラ』に想を得て、後にアメリカでミュージカル作品を中心に有名になるクルト・ワイルが音楽を付けた、演劇史に残る作品の最初の映画化で、“シニカルな視点と不思議な叙情”を感じさせる傑作であります。

えー、普通の映画や演劇を楽しむ場合は、観客は劇中の主人公に乗り移って、劇空間でヒーロー又はヒロインの体験する事象をシンクロナイズ体験します。
そして、ロッキーになって15ラウンド戦い、007になって“男の子の夢”をかなえ、ジェイソンやフレデイーになって…(いけない!これは人によって違うか!)。

で、そのような“一人称的な観点”の作品に対して、主人公を含めた登場人物や劇中の出来事を、“少し離れた距離を持って客観的に観せよう”としたのが、ブレヒトの作劇論理であります。この表現法は、活劇やメロドラマ等の娯楽作品では臨場感を削ぐものですが、(少し自分自身で考えてみる姿勢によってより物語を深く味わう事が出来る)社会的なドラマや寓話的な物語展開に適しているといえます。具体的には観客が、“主人公に同調出来ない”シチュエーションを創り出す事によって、傍観者的な視点と冷静な思考の場を提供し、劇空間への知的参加の楽しみを味合わせるわけであります。

そして、ブレヒトはこの手法で創られた劇がすこぶる魅力的である事を実証すべく“三文オペラ”では大衆社会を、“肝っ玉お母とその子供たち”では戦争の本質を俯瞰的視点で描いて、“客観的叙情”という新しい作劇パターンを確立したのであります。

英国のスラム街を舞台にした、乞食&強盗&官憲の三つ巴の関係から、現在社会の縮図&仕組みが見えてくる社会風刺喜劇であり、同時に一般的には綺羅美やかな物語に沿って歌われる印象が強いオペラの手法を用いたことで、現実からの乖離感覚が鮮やかな音楽劇でもあります(とんでもなく生臭い歌詞を歌う際の旋律が美しく叙情的な事が更に…)。
音楽及び時代背景等の解説は、私より遥かに高次元レベルのレビューがgarbo_2210100さんによって書かれていますからそちらを読まれると良いと思いますが、有名な主題曲“モリタート”を始めとした見事な曲を幾つか聴く事が出来ます。そして後年の翻訳歌“マック・ザ・ナイフ”に比べて格段にスローテンポで、手風琴の調べに乗って歌われるテーマ曲は、この作品の肝である“混沌とした社会と人間の営みの滑稽さ”に対しての不思議な叙情性を謳い上げていて、作者の試みが見事に結実した事を確認出来るのであります。

何度もリメイクされていますが、やはり原作者が監修したドイツ語版の本作がベストの不朽の問題作であります。




ねたばれ?
選挙速報を見ていたら、本作を連想してしまいました(まあそんなもんだ)。

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