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(1960)

LE TROU

監督
ジャック・ベッケル
  • みたいムービー 97
  • みたログ 276

4.42 / 評価:99件

ぼくも打ちのめされた

  • bar***** さん
  • 2016年12月2日 0時55分
  • 閲覧数 595
  • 役立ち度 0
    • 総合評価
    • ★★★★★

ガン! ガン! ガキン!
ドン、ドン、ドン!
「火を」

脱獄映画。ここまでシンプルな脱獄映画もないだろう。
ぼくはまず勘違いしていた。
「脱獄」というのは楽じゃない。看守の裏をかいて、派手に脱獄するショーではない。
それは生死をかけた戦場なのだ。誇りも優しさもない。
あるのは腕を痛め、顔を泥で汚した者同士の、砂のような信頼だけ。

視る者は緊張させられっぱなしだ。この映画には音楽がない。だからセメントをぶち割る音、鉄格子をカミソリで削り切っていく音、看守のコツコツという足音が非常に耳に残る。
焦燥感、不安感、そして極度の集中。この3つがうまく配分される。

我々は若い囚人ガスパールに心を重ね合わせる。彼はもっとも「こちら側」に近い人間だ。明るく社交性があり、屈強な他の四人に比べて少年らしいあどけなさがある。
始めて床に穴を開けるとき、彼が思わず耳を塞ぐシーンがある。ここが映画のハイライトだ。

ぼくはここで度肝を抜かれた。とんでもなく大きな音がするのだ。

ボスランが叫ぶ。「正気か!?」
ぼくも同じ思いだった。
だが音は鳴り続ける。ハガネとハガネがぶつかりあう音。

ガシャン、ガシャン! ガン、ガン、ガン! ガキン!

驚くことにカットは無い。実際にセメントをかち割っているのだ。それがちゃんとした穴になっていくまで3~4分続く。そのあいだ、我々は極度の集中を強いられることになる……まるで自分もそこで固唾をのんで見守っているがごとく。


もちろん全編がこんな感じじゃない。夜は作業、昼間はおのおのの人物描写に焦点が当てられることになる。特に中盤は、ガスパールは後ろに引っ込んでしまい、他の男たちがクローズアップされる。

彼らは屈強だが野蛮人ではない。母親想いのジェオや、沈着なリーダー格のロラン、剽軽なボスラン、荒っぽいが男らしいマニュ。彼らがわずかなセリフながらも非常に魅力的に描かれる。セリフを多用しないところが好きだ。
彼らは多く、物腰や目線、表情で語られている。それなのに手落ちがない。

そしてあのラスト……
計画は露見する。
しかし、真実は視聴者の解釈に委ねられるようになっている。
つまりガスパールは裏切ったのか、否か?
密告でなかったとしたら、なぜばれたのか? という疑問が残るようになっている。

だがあのロランの「哀れだな」というセリフ。
ガスパールの呆然とした表情。
これが非常に象徴的な意味を持っている……
ここにどんな意味を見出すかで解釈が変わるだろう。

だが明確な答えが提出されないままエンディングを迎える……

全編を通してとてつもない緊張を強いられたので、やや疲れてしまって、物語評価を4にした。他はすべて最高だし、総合的に見ても評価は最高で間違いない。
ただこう言ってはなんだけど、人を選ぶ映画かもしれない。
筋書きはシンプル、けばけばしい演出もない、ざらついた砂のような作品。
だから、これを勧める際は、そんな内容に耐えられるかどうか人をよく見て決めるつもりだ。
ただぼくはこの映画を知れてほんとうによかったと思っている。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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