ここから本文です

獅子座 (1959)

LE SIGNE DU LION/THE SIGN OF LEO

監督
エリック・ロメール
  • みたいムービー 21
  • みたログ 62

3.93 / 評価:15件

ロメール式“獅子座の運命”

  • 一人旅 さん
  • 2016年10月8日 0時23分
  • 閲覧数 489
  • 役立ち度 6
    • 総合評価
    • ★★★★★

エリック・ロメール監督作。

パリを舞台に、叔母の莫大な遺産を取り損ねた中年音楽家の男・ピエールが辿る運命を描いたドラマ。

フランス・ヌーヴェルヴァーグの巨匠、エリック・ロメール監督の記念すべき長編デビュー作。ロメールと言えば、男女の恋愛風景を瑞々しいタッチと映像で綴ったライトな作風の傑作が数多いが、モノクロ映像の本作は内容も比較的シビアで暗い。獅子座の中年音楽家・ピエールが叔母の遺産が手に入ると思い、借金をしてまで友人を招いて盛大なパーティをひらく。しかし、あろうことか遺産は全て従兄が受け取ることになり、無一文になったピエールは金を工面すべくパリの街を彷徨う...という“金に困った男の孤独と絶望の日常”を繊細な心理描写で描き出す。

タイトルが示す通り、主人公ピエールは獅子座の男。獅子座が太陽に支配されているように、ピエールも他者から支配され、人生を操られながら生きている。客観的に見ればピエールという男は自堕落で、自分の生活を良くするための努力すらしようとしない。音楽家で食っていけないのなら働けばいいのに、それをしない。ピエールが唯一やることは、金持ちの友人に金の無心をすること。他者に依存しなければ生きていけないピエールの人生は、無意識の内に他者に牛耳られている。いくら立派な外見で偉そうな態度をしていても、ピエールは自分の人生を生きてはいないのだ。

パリの街を彷徨うピエールの孤独な姿、それが延々と映し出される。時々画面に映り込む浮浪者の存在が、ピエールの暗い未来を予見させる。その日の宿泊費すら払えなくなったピエールはホテルから追い出され、あてもなく街を彷徨う。カップルや家族連れがくつろぐ河沿いの道を何度か往復してみたり、空腹のあまり河に浮かんだ食べ物の袋を石を投げて拾い上げたり、その辺に生えている草を口に含んでみたり、市場で万引きしようとして店主に殴られたり...。
なけなしの金で買ったイワシの缶詰を開封しようとしたものの、手が滑ってイワシ汁が自慢のスーツに付着したり、歩き続けたせいで革靴が破損したりと泣きっ面に蜂状態。それに、スーツの染みを落とすための薬品にもやはり金がかかるのが地味に辛いし、そもそも染みなんか気にしている場合ではない。挙句の果てに、“金の切れ目が縁の切れ目”のごとく、仲が良かった友人たちは次第にピエールから離れていく。

普通の人々が身を置くノーマルな世界と、浮浪者が生きるアブノーマルな世界。その境目をピエールはひたすら歩き続ける。特定の目的に沿って進む明確なストーリーがあるわけでもなく、ただ単純に街を彷徨い続ける男の姿を映し出した点がいかにもヌーヴェルヴァーグらしい。
孤独、不信、喪失、虚しさ、絶望、死の恐怖...ピエールを取り巻くさまざまな負の感情が交錯する繊細な映像演出はまさに一級品。そして、劇的な人生を歩むとされる獅子座の運命を象徴するように、最後に映画らしい劇的マジックでピエールの人生をふたたびひっくり返してみせる、ロメール式“獅子座の運命”。結局、ピエールの人生は永遠に他者によって操られるのだ。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 絶望的
このレビューは役に立ちましたか?
利用規約に違反している投稿を見つけたら、次のボタンから報告できます。 違反報告
本文はここま>
でです このページの先頭へ