5.0点
マリリン・モンローっていう人は、画面に出てくるとオーラを放射してますね。セクシーとか、グラマーとかいう言葉は、ちがうと私は思います。妖精みたいなんです。この世のものとは思えない。 伝記なんかを読むと、もうほんとに気の毒でいたたまれなくなる人生を歩んだ人ですし、この映画を撮影した時も情緒不安定で随分苦労したらしいですけど、ひとたびハマると、他の女優さんからは絶対に出てこない愛らしさが画面からあふれ出てくる。 俳優っていう職業はある意味、とてつもなくつらいものだなと思います。最近の俳優さんは、バラエティー番組なんかでホンネをさらけ出すことで共感や親しみを獲得する人が多いですけど、本物の天才俳優っていうのは、プライベートと映像が完全に別物。私生活ではどん底の泥沼の中にありながら、映像の中では天使のように純粋無垢な人、っていうことが要求されるし、またそれができちゃう。世間の誰も自分という「人間」を理解してくれない、いや、理解してくれないからこそ偉大な俳優でありつづけられる。 そんなことは、この映画を評価する上では、関係ないことではあるんですけど。ちょっと考えちゃいました。 この時期のアメリカ映画って、どれもこれもみんな素敵ですね。どの監督とか、どの俳優とかいうのを超えて、共通するセンスというか、雰囲気があります。 舞台演劇のセンスをそのまんま映画の中に持ち込んだ、っていうんでしょうか。テレビドラマで言えばあの「奥様は魔女」みたいな、「ガッハッハ」という観客の笑い声を作品そのものの中に入れちゃう、あのセンスです。 英語の苦手な私でもはっきりと聞き取れる明瞭で綺麗な台詞。妄想を全部言葉で語るリチャードの演技。現実にはもちろんありえないけど夢いっぱいの物語。いいですね。ほんとに舞台を見てるみたい。 今見てもまったく色あせてない、楽しいコメディです。