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SOMEWHERE (2010)

SOMEWHERE

監督
ソフィア・コッポラ
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3.34 / 評価:348件

解説

『ロスト・イン・トランスレーション』『マリー・アントワネット』のソフィア・コッポラが、映画スターの家族のきずなや孤独をセンチメンタルに描いた人間ドラマ。ロサンゼルスの有名なホテルで自堕落に暮らす俳優が、娘との久々の時間を過ごす中で自分を見つめ直すプロセスを映し出す。主演は、『ブレイド』のスティーヴン・ドーフと、ダコタ・ファニングの妹で『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』のエル・ファニング。美しい映像や音楽と共につづられる、父娘のさりげない交流と感情のうつろいに、心を洗われる。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

ロサンゼルスのホテルで派手な暮らしを送るハリウッド・スターのジョニー・マルコ(スティーヴン・ドーフ)だが、別れた妻のもとで暮らしていた11歳の娘クレオ(エル・ファニング)をしばらくの間、預かることになる。騒々しい日常は一転、クレオとの楽しく穏やかな日々が過ぎていく。そして、再び離れ離れになる日が訪れるが……。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)2010 - Somewhere LLC
(C)2010 - Somewhere LLC

「SOMEWHERE」酸のきれいなブルゴーニュのように。監督とホテルがメランコリーを分かち合う

 「ロスト・イン・トランスレーション」は退屈だったが、「SOMEWHERE」は面白かった。

 前者に出てくる新宿の高層ホテルは無味乾燥だったが、後者に出てくるシャトー・マーモントには陰翳があった。

 私のえこひいきだろうか。ホテルの雰囲気で映画の価値を決めるのは乱暴だろうか。

 いや、シャトー・マーモントはたんなる雰囲気ではない。少なくとも、このホテルは映画の主人公ジョニー・マルコ(スティーブン・ドーフ)を守っている。迎合せず、甘やかさず、それでもなぜか守っているのだ。

 ジョニーはハリウッドのスターだ。彼はうつろだ。空っぽだ。映画出演の合間に、パブリシティをこなしたり、いいかげんなセックスをしたりして時間をうっちゃっている。

 そこへ前妻の娘クレオ(エル・ファニング)がやってくる。娘は11歳だ。わけあって、ふたりはしばらく一緒に過ごすことになる。

 映画はそれだけの話だ。筋立てはないし、大きな事件は起こらないし、決め台詞もない。

 それでも、「SOMEWHERE」はすばらしく優美だ。靄のかかった南カリフォルニアの光と、父娘の醸し出す「無為の空気」がことのほか美味に感じられる。それも、ビーフやチーズやマッチョなワインではない。あえていうなら、酸のきれいなブルゴーニュだ。色は淡く、果実味も抑え目だが、香りが高い。

 では、この映画は監督ソフィア・コッポラの回顧談に近いのか。そんな思いも一瞬よぎるが、むしろ私は彼女の透徹した視線に惹かれる。コッポラはジョニーをじっと見つめる。その視線は、ときおりクレオの観察とも相互乗り入れをする。ただし、彼女は診断を下したり、処方箋を書いたりはしない。そうか、シャトー・マーモントも、そんな風にジョニーに接していたのか。監督とホテルが、メランコリーを静かに分かち合っている。(芝山幹郎)

映画.com(外部リンク)

2011年3月25日 更新

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