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子を産んで初めて『誰も知らない』を観たら 「別世界の話」ではなくなっていた

ミランダ
ミランダ

2歳男児を育てながら働くワーママ編集者。『SATC』的女子映画から『スリーパーズ』などの骨太作まで広...

産後、子どもがつらい目に遭う作品が軒並み見られなくなり、もう一生観られないかもと思っていた作品のひとつ『誰も知らない』。

カンヌ最高賞受賞作『万引き家族』を観たあと、同じ是枝裕和監督が「ネグレクト」を描いた作品ということで『誰も知らない』を久々に観ました。

本作で柳楽優弥がカンヌ最優秀主演男優賞を獲得したこと、実際に起きた子供置き去り事件を題材にしていること、子役に台本を渡さない「是枝流演出」などは100万回語られているので割愛するとして、親になってから観る『誰も知らない』がどう変わったかを素直に書きます。

第57回カンヌ国際映画祭のフォトコール

子どもが産まれる前は、どんな虐待も育児放棄もすべて「鬼の所業」と思っていました。『誰も知らない』を初めて観た劇場公開当時、実話が題材と知りつつもどこか「自分とは接点がない人が起こした、遠い世界の物語」と。

でも産後は、虐待や育児放棄のニュースを見るたび「どうしてこんな事を」と胸が苦しくなりながらも、それぞれの事件の背景を知りたいと思うようになりました。そこまで追いつめられた理由があるのか、それは何かなど。

育児をしていて、なんらかの理由で急激に追いつめられて子どもに感情をぶつけたり、信じられない自分に遭遇しそうになった経験は、ママ歴が浅い私でもある。ママ友と話すと程度の差はあれ、必ず経験しているとと言います。

子どもは何者にも変えがたい。でも「かわいい、愛おしい」だけじゃない。
それじゃあ私は、子4人を置き去りにした『誰も知らない』の母と何が違うの?

今この瞬間は、一人で生きていけない小さな子を置き去りにするなんて、こんな目に遭わ せるなんて「鬼の所業」と思える。ましてや理由が自分の恋愛なんて想定外。
でも自分を取り巻く環境が変わったら? 家族のサポートが皆無になったら? あるいは子 どもが一人で生きられるくらい成長したら? 遠い世界の物語と言いきれる?

子どもたちの笑顔がどんどん消えていく2時間半、そんなことをグルグル考えていました。
(それにしてもつくづく子どもたちの表情が演技とは思えない...とくに次男の茂くんの変ぼうっぷり!)

初見時も胸がずしりと重くなり、実際に起きた事件を調べつくしてさらに苦しくなったことを覚えています。今回も胸は重いけれど、その理由はまるで違う。途中で観るのをやめたくなるほどツラかったけれど、親になって観て考えられてよかったと素直に思えました。

第57回カンヌ国際映画祭のフォトコール。是枝監督と母・けい子を演じたYOU

あと100万回語られていますが、ほぼ素と思われる母役・YOUの存在感たるや。これには前回も今回もまったく同じように胸を射抜かれました。

ミランダ
ミランダ

2歳男児を育てながら働くワーママ編集者。『SATC』的女子映画から『スリーパーズ』などの骨太作まで広く浅く。最近気になるテーマは「家族・子ども」。

記事はここで終わりです。

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