本当はミッション:ポッシブルじゃないの? 『ミッション:インポッシブル』の世界

マトリックスをSF金字塔と崇め、過去19回視聴。今年は念願の20回目に挑戦。鑑賞映画1700本、超大...
いよいよ最新作公開が間近に迫った『ミッション:インポッシブル』シリーズ。なぜ最初のコラムに取り上げたかというと、私がトムくんことトム・クルーズの大ファンだから。彼の主演作品ならほぼ全部映画館で見ている、20年来のファンなのだ。
そのトムくん、昔からテレビドラマ『スパイ大作戦』が大好きで、映画化権を買ったのは有名な話。それが今日に至る大ヒットシリーズに成長したのだから、先見の明があったのだろう。
今回は4作目『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』(2011年公開)と5作目『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』(2015年公開)を中心に、今までトムくんが挑んできたミッションについて振り返る。

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スパイ・アクションの面白みといえば、不可能な任務をどう解決するか、である。ここで歴代の任務をおさらい。
1作目:チームを壊滅に陥れた組織の裏切り者を探し出せ
2作目:奪われた殺人ウイルスを取り返せ
3作目:人質にさらわれた妻を取り戻せ
4作目:孤立無援の状態で、核ミサイル発射を食い止めろ
5作目:謎の組織「シンジケート」の陰謀を暴け
以上のように挙げてみたものの、何か「物足りない」というのが私の正直な感想だ。
1作目や3作目は、ある意味で内輪ネタだった。5作目もIMFという組織のお家騒動が中心。特に5作目の敵、「シンジケート」については説明が足りず、強いかどうかも分からない。確かに冒頭でイーサン・ハントが捕まる展開は面白かったが、その後が続かない。拷問シーンはあるのに、イーサンのこれまでの活躍を知っているから、緊迫感も生まれない。トムくん、役作りで鍛え抜いた肉体まで見せ付けてくれるし。案の定、簡単に脱出してしまうので、この組織が「敵」に値するのか、判断しにくい。最初からやすやすとクリアできると、「そのミッション、ポッシブルでしょ?」とツッコミを入れたくなる。
その意味ではシリーズ1作目冒頭で見せた、ジリジリと味方が追い詰められる緊張感の方が、よほど効果的だ。ワナを仕掛けているはずのイーサンたちが、ワナにかかっていたという具合だ。「こんな恐ろしいことが出来る敵を、何とかしなくては」と思うから、グイグイ引き込まれる。ただ1作目の問題は、この「何とかしなくては」が世のため人のためではなく、どこか個人的なのだ。「誰が裏切り者か」だけでは、ヒーローが活躍するには根拠が弱いと言わざるを得ない。同じ理由で3作目後半も「妻を救い出す」ためという、これまた私的な理由にストーリーが終始したのがもったいない。
実はトムくんはSF作品への出演も多いが、そこには必ず世界を救ったり、社会的正義の追及が入る。それに該当するのが2作目と4作目であり、特に4作目は傑作だ。開始30分でモスクワの象徴たるクレムリンを吹き飛ばしたのは、名シーンといえる。
敵は「クレムリンを爆破できるほど本気」であり、「イーサンはその場にいたのに止められなかった」から恐ろしい存在だと分かる。こんな恐ろしい相手が核ミサイルを手に入れたら、とんでもないことになるんだ、と。だからイーサンと仲間たちは必死で止めようとするし、観客も応援に熱が入る。IMFやら何やらは、あくまでオマケで付いてくればいい。観客にとって縁もゆかりもない、架空の組織がどうなろうと知ったことではないのだ。
まとめると、「不可能な任務」と思えるのは4作目だけであり、その任務を遂行するためにチームワークが発揮されたのも4作目だ。5作目もチームが活躍する場面はあるが、間延びして見えるのはやはり大義がないためだろう。

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そして、6作目となる『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』は、前作の物語をベースにしており、製作スタッフも続投という。これまでの教訓を生かして、「恐ろしい相手」を迎え撃ち、「世界を救う」活躍を「チーム」と一緒に繰り広げるイーサン・ハントを描いて欲しい。「そのミッション、インポッシブルでしょ?」と今度こそ思わせて!
『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』は、2018年8月3日(金)より公開。

マトリックスをSF金字塔と崇め、過去19回視聴。今年は念願の20回目に挑戦。鑑賞映画1700本、超大作からミニシアターまでこなすオールラウンダー。