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彼の名は、『クリード チャンプを継ぐ男』

スーパーネイチャー
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マトリックスをSF金字塔と崇め、過去19回視聴。今年は念願の20回目に挑戦。鑑賞映画1700本、超大...

映画『クリード2』2019年1月11日公開決定:特報

スポーツ物の特徴として「努力・友情・勝利」がある。90年代に某少年漫画を読んでいた方なら、三兄弟ヒーローを思い出すことだろう。この三拍子、少年漫画雑誌のスタンスでもある。いわば王道。クライマックスに向けて、涙を流さずにはいられない。

今回紹介する作品もスポーツ物、かつ三拍子そろっている。だが決定的な違いが一つ、それは「努力・友情・勝利」よりも、「家族」を上位に持ってきたことだ。それも実の家族ではない。「伝説のプロボクサーの隠し子」と「父のライバル」が家族になる物語。

映画の冒頭、少年院でケンカが発生し、少年が格上の相手をたたきのめす。指導員が面会にやってきた裕福そうな女性に対し、「悪い子じゃないの、ただ......」と言葉を濁し、女性が「手が早いだけなの」と続ける。少年の性格を知っているかのようだが、もちろん初対面。だから、少年から「おばさん、誰?」と聞かれてしまう。 「僕には父さんなんていないんだ」 「あなたのお父さんは私の夫なの」という会話で、少年すら気まずさを覚える。父の正妻が、隠し子の自分を育てようと手を差し伸べてくれたのだ。

それから十数年後、やんちゃな少年は立派な青年になり、豪邸に住みながら昼は大手企業のエリートとして働いていた。おそらく十分過ぎる教育を受けてきたのだろう。その物腰も落ち着いている。成長した姿はきっと義母の願いであると同時に、青年も期待に応えようとしてきた成果だった。

しかし、根っからの闘士としての血が収まるはずもなく、アマチュアボクサーとして夜な夜なリングに上がっていた。青年は負け知らずで顔に傷一つ負うこともなく、義母にも隠し続けてきたが、ついに会社を辞めて、プロボクサーを目指す決心をする。

紆余曲折の末、ロッキーの営むレストランを訪ねる青年。出会い頭に特訓してくれと頼み込む。老いたチャンピオンは最初、冷やかしか何かと思い、店じまいだから早く帰るように言う。諦め切れない青年は、父の名前をほのめかす。それを聞いた瞬間、ロッキーでも動揺を隠すことはできなかった。

ロッキーは戸惑う。シリーズ6作目『ロッキー・ザ・ファイナル』で語られたように、息子がボクサーという職業を煙たがり、後継者ができなかったこと、そして何より、息子を一度はボクサーに育てようとして失敗したことが、心のどこかで引っかかっていた。そこに現れた、かつての盟友の息子は、ロッキーの言う通り「想定になかった」のだ。熟考の末、青年のトレーナーを引き受ける。その過程で青年は亡き父をロッキーに重ね、ロッキーも青年に「ありえたかもしれない親子関係」を見いだす。

Warner Bros. / Photofest / ゲッティ イメージズ

2人の関係がこじれる一幕もある。事の発端は、ロッキーの秘密が明るみに出たため。青年に心配をかけさせないよう、「どうせ俺たちは他人なんだ」とわざと突き放した。直後、青年はトラブルに巻き込まれ、留置場で夜を明かす。駆けつけたロッキーに対して素直になれず、「どうせ他人なんだろ!?」と返す姿は、少年院で「家族になろう」と言われたシーンと正反対だ。

思えば努力も勝利も、青年が一人でボクシングに打ち込んでいる頃から存在していた。友情も人並みにはあっただろう。だが家族だけは、なかった。ロッキーは義母以外で初めて得た家族だった。だからこそ、「おまえは家族じゃない」と突き放されたときの痛みにもがき苦しむ。自分がどれだけ孤独か、どれだけ弱いかを唐突に思い知らされたのだ。だから青年は、もう二度とそうならないよう、自らをさらに磨きこんでいく。

父親の名前を名乗ることすらためらっていた青年が、最終的にリングネームを改めると決断を下したのは、決してサラブレッドであることを誇示するためでも、ましてや親の七光りに頼るためでもない。ロッキーと、仲間と、遠くにいる母親のため、強敵の待つリングに上るために青年は名乗りを上げる。

その名は、ボクシング界のレジェンド。その名は、少年院で義母から聞かされた自分のルーツ。その名は、「クリード」。

『クリード チャンプを継ぐ男』の続編『クリード2』は、2019年1月11日から公開。

『クリード チャンプを継ぐ男』
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マトリックスをSF金字塔と崇め、過去19回視聴。今年は念願の20回目に挑戦。鑑賞映画1700本、超大作からミニシアターまでこなすオールラウンダー。

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