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列島に増殖中『カメラを止めるな!』の原石はある小劇場から

へらへら眼鏡
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美しいものラブ。尊敬する監督はパク・チャヌク、2017年のベスト映画は「お嬢さん」。2018年のベス...

カメラを止めるな!予告編

ああ、なんだってわたしは映画コラムを書く場で、演劇の話をしてしまうのだろう。正確には、演劇の映像化だけれど。でも、まぁ、そういう人間なのだから、仕方がない。もはや説明不要、大快進撃を続ける『カメラを止めるな!』。通称『カメ止め』。

観終わったあと、真っ先に想起したのは三谷幸喜が率いる東京サンシャインボーイズの舞台『ショウ・マスト・ゴー・オン』だった。

実際に上田慎一郎監督はインタビューで「(三谷幸喜から)影響を受けた」と回答しており、「新世代の三谷幸喜」とまで呼ばれているようだ。
ある世代には懐かしさを感じさせるウェルメイド、若い世代には新鮮なコメディーとして、受け取れたのではないだろうか。

(C) ENBUゼミナール

昨年、自主制作映画をつくっている知り合いから「こんな自主制作映画があるんだって、ああ〜むかつく」と聞いたときは「ふーん。ポスターの女優さんがなんか元AKB48の前田敦子ちゃんに似ているなぁ」くらいにしか思わなかった。

それがまさか、まさか、まさか、こんなに大きなスクリーンで「ENBUゼミナール」のロゴをみる日がくるとは、だれが予測しただろうか?

芸能人が褒めはじめ、テレビで取り上げられ、あれよあれよという間に全国での拡大上映も決まり、わたしが観賞した映画館では、レイトショーにもかかわらずほぼ満席だった。この快進撃は、いったいなんなのだろう?

ただひとつ、分かることがある。こんな邦画を観客は待っていたのだ。

いままでの邦画といえば、血まみれで高笑いをする狂った殺人鬼の藤原竜也、平凡な女子高生となぜかクビにならないドSの俺様高校教師の恋愛物語、モテたいくせに永遠に女子の気持ちを学習しない男子、何千回予告編でみたかわからない自転車での疾走シーン、何千回予告編でみたかわからない誰かの名前を叫びながら号泣する人、永遠に年老いない吉永小百合......。

観客はそういう作品では観ることができなかったなにかを求めて、映画館に集まり、欲しかったったものをやっと得ることができたんじゃないだろうか。彼らの口コミが、『カメ止め』に出会えた感激が、さらに観客を増やし、『カメ止め』を押し上げ、広がっている。

感動的だ。最高じゃないか。

まるで壊れてしまったアレを、アレするために、みんながアレしているあの場面を、観客たちが劇場の外で自主的に続けているみたいだ。

では『カメ止め』は、なにが他の自主制作映画と違ったのだろう?

これもほうぼうで書かれていることではあるが、『カメ止め』の原案、劇団PEACEというすでに解散してしまった劇団の『GHOST IN THE BOX!!』という作品だったらしい。上田監督はこれを観て、映画化のアイデアを得た。

わたしは自分で演劇を製作するし、日本劇作家協会という演劇人以外は誰もしらない協会に所属しており脚本を書いているので、日々演劇界の情報は仕入れ、観劇にもたびたび赴く。わりとその界隈(かいわい)は人より詳しいつもりだが、不勉強ながら、同劇団も作品の存在も知らなかった。

『カメ止め』がいろいろな奇跡を起こしているのは分かっている。しかし、演劇贔屓の者としては、小劇場には、日本映画を変えられる原石が、まだまだ転がっているんじゃないだろうか? と言いたくなってしまう。

わたしごときが言うまでもないのだが、演劇をアイデアソースにしている映画の傑作は、ほかにもたくさんある。この際だから『カメ止め』に続き、どんどん小劇場の演劇を映画化していってほしい。

いままでの製作体制ではありえなかった、そしてすばらしい日本映画が、次々と誕生するんじゃないだろうか。その際は製作費は300万円とは言わず、必要なぶんだけ映画会社やスポンサーが、自由な製作環境は保ったまま、用意してあげてほしいけれど。

『カメラを止めるな!』
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美しいものラブ。尊敬する監督はパク・チャヌク、2017年のベスト映画は「お嬢さん」。2018年のベストは『タクシー運転手』か『アイトーニャ』になりそう。人生で一番繰り返し観た映画は『タイタニック』最近観てよかったのは 『ラジュテ』。最近、自主制作映画がきになる。

記事はここで終わりです。

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