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鼻から牛乳を吹き出す衝撃度の『インクレディブル・ファミリー』鑑賞録

スーパーネイチャー
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マトリックスをSF金字塔と崇め、過去19回視聴。今年は念願の20回目に挑戦。鑑賞映画1700本、超大...

『インクレディブル・ファミリー』 予告編2 [記事を読む]

あ......ありのまま今日観た映画のことを話すぜ!
おれは『インクレディブル・ファミリー』を観に行ったと思ったら、いつのまにか『インクレディブル・ヘレン』を観ていた。 何を言っているのか、分からねぇーと思うが、おれも何をされたのか分からなかった。頭がどうにかなりそうだった。『ワンダーウーマン』や『アントマン&ワスプ』みたいな実写ヒロインじゃあ、あの味わいは出せねぇ。まるで口いっぱいに含んだ水道水を鼻から全部吹き出すほどの衝撃を味わったぜ......。

(C) 2018 Disney / Pixar. All Rights Reserved.

もうオチがついたようなコラムだけど、今話題の『インクレディブル・ファミリー』の感想である。ほかの映画コラムと唯一にして最大の違いは、筆者が前作『Mr.インクレディブル』をスルーしている点にある。ハッキリ言って本作も公開までは興味がなかった。自分も大人である。子どももいない。ピクサーはそこそこ観るけど、ファンでもない。例えるなら、「プリン〜〜〜? ケッ! おれは不良だよ......! フン! プリンなんて子どもの食う物なんてチャンチャラおかしくて......」と粋がってる高校生と同類だった。

ところがどうだ。全米公開されるや海を渡って聞こえてくる絶賛の嵐と、記録的な興行成績に屈し、公開初日に観に行ってしまったのである。ミーハーとは恐ろしい。前作を観ていないのに大丈夫かと思った矢先、いきなり銀行強盗のシーンで始まる。直感的に「節子、アカン、これ前回からつながってるヤツや......」と青ざめる自分を置き去りに、アクションシーンが文字通りジェットコースター式に続いていく。この辺は『X-MEN』シリーズなどでも見られる手法だけど、一つのシーケンス内にヒーロー全員の特殊能力と見せ場を織り込むことで復習の意味を果たすのだが、初見オジサンには貴重な予習シーンとなった。ありがたや、ブラッド・バード監督。

(C) 2018 Disney / Pixar. All Rights Reserved.

ただしヒーロー家族が活躍するのはここまで。ここからは先に述べたようにヒロインのヘレンことイラスティガールの独壇場になっていく。力持ちだが街を破壊しまくる夫のMr.インクレディブルに比べ、彼女が活躍しても被害が少なく、費用対効果が良いという筋書きこそあれ、ピクサーのアニメーターが明らかに彼女を描きたかったからだろう、というのが私の見解だ。本作で描きたかったのは女性の社会進出とか、育児パパは大変だとするレビューが多いけど、自分に言わせれば全て後付けの理由だ。そういう人たちは物作りしている人間のモチベーションがどこにあるか分かっていない、と断言しよう。......おっと、こんな時間に誰か来たようだ。

............。

えーーっ、一部不適切な発言があったので、ここでレビュアーの皆様に謝罪します。私、スーパーネイチャーはこのコラムを皆様に届けることで、皆様が映画を観ずとも映画を観たような気分にさせることを使命とします。日々スマホやパソコンとにらめっこされている皆様にとって、ゲームをするよりゲーム攻略動画を見たり、旅行に出るより旅番組や海外の絶景写真を見たり、ボランティアをするよりボランティアの記事を読む方がよほど重要だと思います。私を含めたコラムニスト一同も、毎日コンビニに並ぶおにぎりのように、映画ほど味わいはないですが、皆様の胃袋を満たしていけるよう日々コラムを生産してまいりたいと思い......。うっ、頭が、頭が......。

おや、急に視界が遮られていたと思っていたら、変な文章を書いているではないか。そして足元に転がったこのゴーグルは......ま、まさか、スクリーンスレイヴァーのあのゴーグルではないか! 装着した者を意のままに操り、人々を堕落させる、うぬぬっ、許せん! おれは、おれの意思でこのコラムを書き上げるんだぁー!

というのが本作の問題提起である。えっ、回りくどくて何が言いたいか分からない? おかしいな、このテイストも含めて再現できたと思うんだけど。そして問題に対する回答がない? 大丈夫、それは本作を最後まで観ても提示されないから。

つまり、女性の社会進出や育児パパの大変さを謳いながら、それが敵の思想や事件の本質とはあまりリンクしていないことから、恐らく作り手は最初からそこを重視していない。『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』を手がけたバード監督だ。本当に辻つまを合わせたいのなら、もう少しうまいストーリーテリングができたはず。それをあえてしなかったのだから、もう確信犯としか言いようがない。

それよりも、40歳手前の熟女ヒロインを前作よりもフェティッシュな全身タイツで戦わせる、と文字にすると身もふたもない表現を、14年越しに実現させた作り手の手腕と熱意に感動の念を禁じえない。あのレトロさあふれるシルバーの全身タイツこそアニメーターの夢と希望の象徴に違いないのだ。前作から歳を取った自分たちを彼女に重ね、もはや動かなくなった自分たちの身体の代わりに、彼女に大胆かつしなやかなアクションをさせる。同じアクションならマッチョだけが取り柄の旦那より、表現が豊かでアクロバティックに動かせる彼女の方が、描いている方も楽しいというもの。本作の悪役のスクリーンスレイヴァーが、見たいものだけを見る庶民を嘲笑って洗脳していたが、果たしてそれは現実の観客のことを言っているのか、アニメーター自身を指しているのか、判断するのはコラムではなく、映画を観た皆さんだ。

『インクレディブル・ファミリー』
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マトリックスをSF金字塔と崇め、過去19回視聴。今年は念願の20回目に挑戦。鑑賞映画1700本、超大作からミニシアターまでこなすオールラウンダー。

記事はここで終わりです。

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