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テニス絶対王者の衝撃の姿に見たマイク・タイソンの面影

ニック
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カッコイイ男の生き様が描かれた作品に胸が高鳴る「一本気なポプコニスト」。生涯ベストは、パチーノ&デ・...

『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』 予告編

「みんなが見たいのは、オレが負けるところなんだ」

目を疑った。あのビヨン・ボルグが、こんな言葉を吐いていたとは思いもしなかった。ボルグは、1976年に20歳の若さでウィンブルドンを制し、グランドスラム通算11勝を記録したテニスの名選手である。彫刻のような美しい顔立ちでテニスに興味のなかった人も虜にした。同時に彼は冷静沈着なプレースタイルから「氷の男」とも呼ばれた。そんな男が「オレが負けるところを見たいんだろ」と口にしていた。

(C) AB Svensk Filmindustri 2017

今作『ボルグ・マッケンロー/氷の男と炎の男』は、ウィンブルドンで5連覇を目指すボルグと、その絶対王者に立ち向かう宿敵のジョン・マッケンローの対決を描いた実話である。

(C) AB Svensk Filmindustri 2017

24歳のボルグは重圧と戦っていた。その苦しみは誰にも分からない。たとえコーチであっても、心を許せる恋人でさえも、ボルグを癒やせることはできなかった。プレシャーに押しつぶされそうになった彼が放った言葉がこれだった。

「負けるところを見たいんだろ」

ボルグは壊れそうにもなる。だから、自分を作り上げたルーティンに没頭した。試合前にはホテルの一室でラケットを足の裏で踏み、ガットの張りを肌で感じる。そして、ラケットをたたいては音を鳴らし、感覚を研ぎ澄ます。その姿は狂気じみた行為のようだ。それだけではない。試合会場に持って行くタオルやウエアの枚数など、ありとあらゆるところで勝利のルーティンを貫く。そうしてボルグは栄光を勝ち取ってきたから。それでも心は乱れる。なぜなら王者の心をかき乱す挑戦者が現われたからだ。

(C) AB Svensk Filmindustri 2017

その男こそがジョン・マッケンロー。破天荒な性格で母国アメリカのメディアから「アル・カポネ以来の悪童」とレッテルを張られ、試合ともなれば、主審や観客にまでも罵声を吐くような男だった。そんな真逆の個性を持つふたりの天才が、1980年のウィンブルドン決勝で対戦し、3時間55分に及ぶ名勝負を繰り広げる。いまも伝説の試合と語り継がれる一戦だ。そして、今作はというと勝敗を超越したところへと着地する。コートを挟んで戦った者だけが知りうる世界へ観客は導かれるのである。

(C) AB Svensk Filmindustri 2017

いつの時代も絶対王者と呼ばれるスポーツ選手は存在するものだ。今作のボルグを観ながら思いをはせたボクサーがいる。

マイク・タイソン。

1980年代後半から90年代に活躍した史上最年少ヘビー級チャンピオンは、負ける姿が想像できない王者だった。連戦連勝を重ねた全盛期は、手がつけられないほどの圧倒的な強さを誇った。しかし、いつの日から視聴者は豪快なKO勝ちよりも負けるかもしれない最強王者を見たいがためにテレビのチャンネルを合せた。次第にタイソンは自分を見失い、初の黒星を東京ドームで喫する。ヒーローはヒールになっていた。

「みんなが見たいのは、オレが負けるところだろ」と弱音を吐いたボルグの結末はどうだったのか。マッケンローに自分自身にも勝つことができたのだろうか。

『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』
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カッコイイ男の生き様が描かれた作品に胸が高鳴る「一本気なポプコニスト」。生涯ベストは、パチーノ&デ・ニーロが共演した『ヒート』。

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